【1月22日厚労省要請】高額療養費制度の限度額引き上げは撤回を

2026年1月22日

2026年1月22日

厚生労働大臣 上野賢一郎 様

 

高額療養費制度の限度額引き上げ撤回を求めます

 

全国保険医団体連合会

 

厚労大臣と財務大臣は昨年12月24日、高額療養費制度の自己負担限度額を引き上げることを決めました。保団連は、重症疾患の患者に応能負担を求めることは治療中断による重症化や生命の危機を招くと抗議し撤回を求めました。

制度見直しは、多数回該当の据え置きや現役世代への年間上限額の新設、年収200万円未満の所得区分での多数回該当の引き下げなど長期療養者に配慮する一方、2026年8月に自己負担限度額を一律引き上げた上で27年8月には、現在の所得区分(4区分)を13区分に細分化し、限度額をさらに引き上げます。

昨年3月に多くの患者・国民の強い批判を受けて石破政権が高額療養費の限度額引き上げを凍結しました。しかし、わずか1年で高市政権は凍結を解除し、限度額引き上げを決めたことに、「当事者の声を聞くということだったが、文字通り『聞いた』だけだったのか」と怒りの声がSNSでも急速に広がっており、限度額引き上げ撤回を求めるオンライン署名は18万6千筆に達しています。

物価高騰で実質賃金が低下し、高額療養費制度を利用せざるを得ない重症疾患を持つ患者の家計は医療費負担で逼迫しています。また、高額療養費制度を利用する患者は、病気で事業の休業や就労制限を余儀なくされており、所得の減少の中、貯蓄を取り崩す等で何とか治療費を捻出している状況にあり、金銭的な余裕はまったくありません。緊急で行った患者影響調査(回答数:1700)でも、現行の限度額でも高すぎて利用できない状況にあり、さらなる負担上限引き上げで治療中断に追い込むことになります。

 

受診抑制で1070億円の給付削減見込む

 

2026年と2027年の2年間にわたる制度改悪で給付費が2450億円(保険料削減効果が1640億円、公費削減効果が800億円)削減されます。新設された年間上限該当者(約50万人を見込む)で給付費増加額は540億円となり、給付削減額と給付増加額の差し引きの金額となります。

重大なことは限度額引き上げに伴う受診抑制(いわゆる長瀬効果)を1070億円見込んでいることです。受診抑制により削減される金額は削減全体(2450億円)の約44%にあたります。まさに命を削って1000億円の削減を見込んでいることになります

※長瀬効果とは実効給付率が変化した場合に経験的に得られている医療費の増減効果の算定式に今回の見直しに伴う実効給付率を代入し機械的に算出された額

 

引き上げ対象は660万人 利用者の8割が負担増に

 

大臣合意では、年1回から3回制度を利用する人の限度額引き上げ対象は660万人と、全利用者(821万人)の8割に及びます。また、すべての所得区分で負担増となりますが、年収650万~770万円の所得区分では現行の限度額8万100円から2年後には11万400円と約3万円(37%)も増加します。

1回から3回までの限度額が引き上げられると月ごとの医療費が限度額に到達しなくなり、多数回も適用されなくなる患者が生じることが懸念されます。長期療養者にとっても重い負担になります。

70歳以上に適用される外来特例も年収200万円から370万円の所得区分では現行の1万8千円から2万8千円と55%増となり月額1万円の負担増となります。乳がん、肺がんなどの外来化学療法を行っている患者に大きな影響が出ます。

 

保険料軽減は国民一人あたり月49円

 

応能負担は患者負担ではなく税や社会保険料負担にこそ適用されるべきです。重症疾患の患者に応能負担を求めることは治療中断による重症化や生命の危機を招くだけであり、疾病給付や社会保険の概念とも相いれません。

政府は現役世代の保険料負担の軽減のために社会保障給付を削減する方針を掲げています。1月9日の記者会見で上野大臣は、高額療養費の限度額引き上げ(負担増)に伴う保険料軽減効果について「高額療養費の給付削減で26年度は700億円の保険料が下がる」と説明しました。700億円は国民一人あたりにすると年間583円、月49円と保険料軽減効果もわずかです。

 

税収・保険料収入の上振れで財源確保できる

 

政府は、26年度の税収は、25年度比7.6%増の83兆7350億円を見込んでいます。物価上昇や好調な企業業績を背景に、7年連続で過去最高を更新する見通しです。賃金上昇に伴い保険料収入も増加し、協会けんぽは、約6600億円の黒字決算(24年度)となりました。

保団連は、物価高騰を上回る賃上げで保険料収入を増やす▽法人税優遇税制の見直し▽金融所得への課税強化―など所得に応じた課税を進め医療・社会保障を充実させことを求めています。大企業や富裕層の応能負担を強化し、物価上昇を上回る賃上げを確保することで社会保障財源は十分に確保できます。

公費を活用し給付を削減せずに「現役世代の保険料負担軽減」も実現できます。がんなど重症患者が高額療養費制度を利用できなくなる、医療が受けられなくなる事態が生じてはまったく意味がありません。診療報酬・介護報酬の引き上げと同様に税収や社会保険料収入の上振れ分の一部を活用すれば、全世代に重要なセーフティネットである高額療養費制度も現状維持することは可能です。

制度の持続可能性を維持することを理由に限度額を引き上げると、大病を患っても実際には利用できない制度となり、むしろ現役世代のリスクが増大します。

子どもを持つがん患者や家族にとって、高額療養費制度が使えなくなることに不安しかありません。高額療養費制度の自己負担限度額の一律引き上げや所得区分細分化による限度額引き上げ(外来特例含む)は撤回し、すべての所得区分の限度額引き下げこそ実施すべきです。