「新たな地域医療構想」のとりまとめ案が示された。2040年に向けて各病院について「主たる機能」を明確化し、再編・集約化、病床削減を進める構えだ。地域の多様なニーズに対応した病院への手当こそ必要である。
重点は入院医療の縮小
厚労省は3月3日、「新たな地域医療構想とりまとめ案」について有識者検討会に示した。とりまとめを踏まえ、厚労省は3月中に新たなガイドラインを発出する。
新たな地域医療構想は入院医療に加え、外来医療・在宅医療も含む「医療提供体制全体の課題解決を図るもの」と位置付けられる。ただし、外来・在宅医療については別途かかりつけ医機能報告が開始されており、とりまとめ案の内容に新味は乏しい。これまで同様、病院の再編・集約、病床削減が中心となる。
人口減少地域は構想区域拡大
これまで構想区域は2次医療圏にほぼ一致する形で設定されてきたが、とりまとめ案では、人口減少が進む地域では構想区域の広域化を検討するよう求めている。入院報酬は引き上げず、より広い地域をカバーして経営を維持すればよいというものである。とりわけ、手術や救急医療等を集中的に担う「急性期拠点機能」を担う病院については、人口20万から30万人の単位で1つ確保することを基本的な考え方として示している。全国で400~600前後の病院となり、急性期医療へのアクセス低下が危惧される。
さらに、急性期拠点以外の救急病院や夜間の緊急手術などを行う病院についても集約化を検討するよう求めている。
病院の機能を選ぶ
これまで病床機能報告を運用してきたが、新たに医療機関機能報告を追加する。病院に主な医療機能を選択させて、急性期病院の絞り込み、ケアミックス型病院の淘汰を進めて、病院集約・病床削減を加速させる狙いである。
病院・有床診療所は、各施設が2040年に向けて担う「医療機関機能」(表)について、急性期拠点機能、高齢者救急・地域急性期機能、在宅医療等連携機能、専門等機能の4機能から選び報告する。複数の機能の選択(報告)は否定されていないが、急性期拠点機能については、救急搬送・手術の件数など一定の診療実績を要件に求める構えである。また、とりまとめ案では、「2040年に向けて各医療機関が担う主たる機能について協議する」など「複数の医療機関機能を報告する上での考え方を整理する」として、当該病院の主たる機能を明確化する方向で議論するよう求めている。
28年度までに病院機能を決定
医療機関機能報告は2026年10月が初回の報告となる。報告を踏まえ、各都道府県は2028年度までに構想を策定する。具体的には、28年度までに地域の協議の場において、各医療機関(大学病院は除く)が 40 年に向けて担う医療機関機能について決定(明確化)する形となる。「A病院はXの医療機関機能を担う」として決定した以降は、決定された病院の機能とその診療実績等を都道府県に報告しつつ、病床の削減・転換に向けて取り組みを進めていく。35年を目途に一定の成果を確保するよう求めている。患者・住民にも事態が知らされないまま、短期間で病院・診療科の存続の可否が決められていく事態が相次ぐことになる。
必要病床数を低く見積もる仕組み
2040年に向けて、各都道府県で確保する「必要病床数」については、在宅療養の強化、リハビリ促進、医療DXの推進などさまざまな仮定を駆使して、低く見積もることになる。
まず、病院の連携・再編・集約化等に伴う病床利用の効率化、早期のリハビリ等を通じた早期退院による効率化、在宅医療・介護との連携による効率化などを反映するとしている。
75歳以上の患者については、医療資源投入量から急性期需要と算定してきた患者であっても、うち5割分は包括期機能(旧・回復期)の需要として見込む。加えて、整形外科疾患の入院患者(回復期リハビリ入院料算定)については、速やかなリハビリなどを進めて、平均在院日数を短縮することを見込む。
なお、必要病床数はレセプトデータを基に入院需要を算出し、それを「病床稼働率」で割り戻して推計しているが、「病床稼働率」について、効率的な病床運用への取り組みや医療DXなどを踏まえて、急性期での設定は84%(現行78%)に引き上げられる。
さらに、必要病床数は、医療計画の見直し(2030年、2036年)にあわせて下方修正を図る。
地域の医療提供体制を守るには、病床削減ありきの構想の策定・推進ではなく、地域の様々なニーズに応えてきた病院への手当こそが求められる。
| 表 医療機関機能の概要 | |
| 急性期拠点機能 | 手術や救急等の医療資源を多く要する医療について幅広く総合的に提供
災害医療、新興感染症対応、医育(臨床研修・専門研修)、地域の医療機関への人的協力、地域における必要な病 床の確保のための積極的な役割 急性期医療等の実績データに加え、政策医療の実施状況や経営状況、建物状況(老朽化)なども加味して、人口20万~30万人につき1つの病院を選定 |
| 高齢者救急・地域急性期機能 | 高齢者をはじめとした救急搬送を受け入れる
必要に応じて専門病院や施設等と協力・連携しながら、入院早期からのリハビリ・退院調整等を行い、早期の退院につなげ、退院後のリハビリテーション等の提供を確保する |
| 在宅医療等連携機能 | 在宅医療の実施
他の医療機関や介護施設、訪問看護、訪問介護等と連携した24時間の対応や入院対応を行う |
| 専門等機能 | 上記の3機能に該当しない、集中的なリハビリ、中長期にわたる入院医療機能、有床診の担う地域に根ざした診療機能、一部の診療科に特化し地域ニーズに応じた診療を行う。療養専門、リハビリ特化、単科に特化した医療機関など想定。 |
| 医育及び広域診療機能 | 大学病院本院が報告 |
| 「新たな地域医療構想とりまとめ案」(2026年3月3日)などに基づき作成 | |


