
保団連は4月14日に大臣会見で、高額療養費の限度額引き上げに「患者団体が同意していない」ことを大臣に確認しました。
政府が提案した高額療養費の月額上限の引上げについて患者団体は同意していないことが、参議院予算委員会の参考人質疑で明らかになりました。昨年12月25日の医療保険部会で、月額上限の具体的な引上げ金額が初めて示されましたが、その審議会でも患者団体は月額限度額の引き上げに同意の意思を示していません。月額上限引き上げのさらなる抑制に向けて要望書を厚労省に提出されており、高額療養費の専門委員会での再検討を求めています。しかし、この事実経過について、上野厚労大臣や高市総理は国会で繰り返し患者団体の意見を取り入れたなどと答弁しており、「患者団体が限度額引き上げにお墨付きを与えた」との誤認を招く原因となっていました。
保団連は、「患者団体の合意がないまま政府案を決めたのに、国会で患者団体の意向と答弁したことは問題ではないか。特に、4月7日の審議で高市総理が『今年8月から開始するということが、患者の皆様の意向にも沿うもの』との認識を示したたことはどのような根拠で答弁したのか」と質問しました。
上野厚労大臣は、「患者団体からさまざまな意見をいただいているのは事実だが、(見直しの)基本的な考え方については(患者団体に)合意いただいた上で、金額等については政府として責任を持って決定した。総理の発言は、年間上限の導入に関するもの」と答弁しました。
大臣の答弁で「具体的な引き上げ金額は政府が決めた」ので患者団体のさまざまな意見は「聞いておくだけ」という厚労省の姿勢が明らかとなりました。
上野大臣は、総理の「患者の意向」発言は、「年間上限の見直しについて答弁したもの」と言い逃れました。
しかし、4月7日の参議院予算委員会の審議は、公明党の原田議員が、月額上限の引き上げによる負担増で受診抑制が懸念されていること、患者の不安や絶望にどう向き合うのか、どんな言葉をかけるのか」との質問でした。その質問に対する高市総理の回答は、真正面から答弁せず、かみ合わない答弁でした。患者の不安や受診抑制の懸念に誠実に向き合った答弁になっていません。
肝心な収入減少を踏まえた調査はしてない
保団連は、収入減による患者の家計への影響、受診への影響などを調査把握した上で、月額限度額の引き上げを提案したのかと質問しましたが、上野厚労大臣は「それは後日にさせていただきたい」とまともに答弁できませんでした。高額療養費の専門委員会では、治療に伴い収入が減少したモデルでの患者の家計への影響を検討した形跡がありません。受診への影響を見る際に最も重要な要素は治療に伴う家計収入の減少です。保団連の調査でも半数以上の患者が収入減となっています。治療後に収入が減る中でも、適切な医療を受けられるかは治療費を払えるかに関わります。患者に応能負担を求めることはありえません。収入が減少した場合に、治療費が破滅的支出にならないかなど受診への影響評価を行うことは不可欠です。厚労省は、専門委員会での不十分な検討を認めた上で、今年8月からの高額療養費の限度額引き上げは撤回すべきです。
- 上野大臣会見概要 |令和8年4月14日|大臣記者会見|厚生労働省
- 保団連
- 高額療養費制度についてお伺いします。参議院予算委員会の参考人質疑で、患者団体は高額療養費の月額上限の引上げに同意していません。専門委員会での再検討を求めています。患者団体の合意がないまま政府案を決めたのに、国会で患者団体の意向と発言がありましたが、問題ではないでしょうか。4月7日の審議で高市総理が「今年8月から開始するということが、患者の皆様の意向にも沿うもの」との認識を示されましたが、何を根拠にそのような答弁をされたのでしょうか。高額療養費の専門委員会では、収入減少に伴う家計の支払い余力に関する患者影響調査を実施していません。教育費支払いによる患者家計への影響も考慮されていませんが、そのような認識でよろしいでしょうか。
- 上野厚労大臣
- 第8回の専門委員会で、見直しの考え方を整理いただいていますが、その際には、所得の低い方への負担に配慮する、一人当たり医療費の伸びに応じて月額上限額を見直す、また、応能負担という観点に基づき所得区分の細分化を行う、長期療養者や低所得者へのセーフティネット機能を強化する観点から、多数回該当の据え置きや年間上限の創設、年収200万円未満の方の多数回該当の金額の引下げなど、具体的な見直しの方向性を記載した資料をお示しした上で議論いただき、合意されたものです。今回の見直しについては、患者団体の方をはじめ、保険者、労使、医療関係者など、多くの関係者と丁寧な議論を積み重ねた上で整理いただいた、今申し上げた考え方を踏まえて、具体的な金額を決定したものです。なお、総理の発言について言及がありましたが、これは年間上限の導入に関するものです。年間上限については、まさに患者団体の皆様からのご意向が強いものですし、現物給付化するためのシステム整備を待つのではなく、まずは償還払いであっても早急に実現を図るというのが専門委員会の議論の到達点であることを踏まえたものです。また、家計への影響については、それぞれの患者さんが置かれた状況、具体的には、病気の状態や世帯構成、就労の有無、預貯金の状況などは様々であるという前提に基づいて、専門委員会において、延べ20を超える事例や家計調査を基にした資料などお示しして、丁寧に議論を重ねてまいりました。その上で、専門委員会の委員からは、長期療養者の方は、経済的負担が累積されるため、生活や就労に直結する深刻な問題となっていること、就労面では、収入の減少などというケースも少なくないこと、また、現在の多数回該当のみの制度では、長期利用者の生活への影響を緩和することが難しいといったご意見もいただいたので、このような議論も踏まえて、多数回該当は据え置き、年間上限の創設など、先ほど申し上げたセーフティネット機能の強化に努めてきたところです。今回の見直しによる患者の皆様への影響については、今後ともしっかりと注視してまいります。
- 保団連
- お答えになられていないのでもう一度聞きます。昨年12月25日、具体的な月額上限の引上げ金額が初めて示された会合では、患者団体は同意していません。そのことをお認めにならないのであれば、事実をお認めにならないことになりますので、再度そのご認識を改めていただきたいと思います。あと、専門委員会での収入減少、家計一般の話ではなく、収入が減るのですよ。がん患者は治療で。そのことを一切考慮されていないと思うので、これは先ほど質問のあった健保法の議論にも関係してきますので、このままだと、健保法の家計への配慮規定の中に、肝心な収入減少や教育費というのは一切入らない状態になってしまいます。そこが不十分なところがあるとお認めにならないと、今後のいろいろな検討の際に、実態と乖離したことになるので、是非その2点は今即答できなくても踏まえてほしいし、最低限、患者団体の意向ではないというご見解をお願いします。
- 上野厚労大臣
- 患者団体の皆さんからさまざまなご意見をいただいているのは事実ですが、先ほど申し上げたとおり、基本的な考え方については合意いただいた上で、金額等については政府として責任を持って決定させていただいたものです。また、教育費等については、先ほどの家計調査の中に当然含まれているものですので、その状況をお示ししながらご議論いただいたものと認識しています。
- 保団連
- 収入が減るのですよ。収入が減らない状態の収入で月額上限が決められて、かなりきついというのが、それが一番重要なところなので、一番重要なところを検討していないから不満が残っているのですよ。それは今即答できなくても、収入が減るということが患者さんにとっては一番大きいのですよ。そこがないので、今皆さんは怒っているので、収入が減らないのであれば払えるのではないかという議論をされているのですよ、そちらは。それではだめだということをずっと言っているのにかみ合わないというのがあるので、そこは是非検討してください。
- 上野厚労大臣
- それはまた後日にさせていただきたいと思います。


