
第114回(2026.4.25)
患者さんが、何でも話せる医師を目指して
「私が歩けないのは、亜鉛が不足しているからだと思います。亜鉛を処方してください!」
先日、外来に来られた50代の男性です。採血してみましたが、亜鉛の値は正常でした。なぜ亜鉛不足で歩行障害とおっしゃったのか尋ねると、インターネットにご自分の症状を入力し、「原因・治療法」と入力し検索を実施した結果とのことでした。結局、この方は脳梗塞でした。
ご自分の症状を入力・検索してから来院される患者さんは、少しずつ、年代に関係なく増加している印象です。医療機関を受診する前に、予習と称して知識を整理する分には良いとは思います。これから診察して答えをだそうとする目の前の新患外来担当の医師に、インターネットから得た回答の治療法を求めてくる患者さんは、今後減ることはなく、増えてくるかもしれません。
なぜなのか、小生なりに原因を考えてみました。
医療は日々進歩しており、われわれ医師も、医学部で学んだときの情報や治療法が、現在の情報・治療法とは内容が少しずつ異なってきております。新しい治療法が開発され、日々自らの脳内の情報をアップデートしないといけないのは事実です。アップデートを常に続けていくのは至難の業です。インターネット上の情報もアップデートされているものと、されていないものと双方が存在しております。それを見極めていくのは、患者さんたちにとっても容易なことではないでしょう。そこでインターネット上でAIなどに情報を入力し尋ねているのではないかと考えました。
もうひとつは、気兼ねなく尋ねられることではないでしょうか。例えば目の前の先生に、別の科目のことを尋ねたところ、「それは専門科の先生に聞いてくださいね!」となることが多いのかもしれません。AIはどんな質問でも冷静に、知っている膨大な情報から考えて、真の回答も誤った回答も、本当のことのように答えてくれます。病病・病診連携も大切ですが、患者さんから体調のこと・疑問に思ったことは、何でも話していただける医師を目指して日々精進している毎日です。

中村起也
(なかむら・たつや)
イムス明理会仙台総合病院 内科医師。内科全般・認知症・パーキンソン病などを中心に診療。日本神経学会専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、介護支援専門員、医療福祉連携士。宮城協会理事。保団連勤務医委員会委員。


