
勤務医コラム 第116回(2026.7.15)
医師の人生設計
第17回保団連勤務医交流会に参加した。午前は千葉大学大学院地域医療教育学鋪野紀好特任教授の「若手勤務医は何を見て、何を不安に思っているか」、午後は各協会勤務医部会の活動報告と意見交換だった。鋪野教授は、若手世代医師への指導を中心に講演され、以前のストレート研修とは異なる研修制度に若手医師が将来に漠然と不安を抱いているとの発言は印象に残った。
意見交換でも、物価や光熱費や薬剤費や材料費などの高騰に加えて、ベースアップ評価料が導入されたが、実質的な診療報酬が上がらず、医療機関や診療科の淘汰が予想され、「医師の人生設計」が話題のカギと思えた。
自分の世代は、卒前臨床実習は見学、卒後はストレート研修で、専門医資格も学会に規定年限所属すれば、ほぼ無条件で取得できた。2006年から前期研修が導入されると、約4割の卒業生が大学に残らず、前期研修や後期研修を受けていた。日本専門医機構が設立された 14年以降は、大学医局に入局する揺り戻しが起こった。
医学教育の国際化に伴い、22年に医療法が改定され、大学3年でCBT・OSCEの共用試験に合格すると、学生医師として、指導医の下で医療行為ができるようになっている。 世代が変わると、卒前卒後の医師養成システムが大きく変わる。現在は、専門医取得要件の症 例実績や学会発表や論文 執筆が、大規模病院での研修でないと困難になっている。厳しい経営環境から、金融機関などからの融資や返済が想定できず、病棟改修や建て替えが困難な病院も多い。
日本以外の諸外国では、卒後は、専門診療科へのストレート研修と学び直しのリカレント研修が主流であり、日本の方式は人と費用と時間の無駄遣いにも思える。前期研修と後期研修を統合し、以前のようなストレート研修やリカレント研修に戻した方が、経費や医療資源や個々の医師の人生設計においても、効率的と思える。今回の交流会を参考に、勤務医の役に立つ活動を大阪でも 拡大継続したい。

原田佳明 はらだ・よしあき
1982年広島大学卒業、93年関西医科大学小児科入局、07年京都大学大学院医療経済学博士課程修了。大阪協会副理事長、保団連勤務医委員。主な論文に「勤務医の労働環境実態と 医療安全」(『日本医療・病院管理学会雑誌』45 巻 215-226頁)2008年


