診療所にはハードル高く評価も不足 新興感染症に対応

全国保険医新聞2022年4月15日号より)

 

 2022年度診療報酬改定では、新型コロナウイルスをはじめとした新興感染症対応を強化し、感染防止対策評価が新設される。しかし、感染患者受入れや発熱外来対応が求められるなど対象とする医療機関は限られる。日々感染対策に取り組む全ての医療機関を正当に評価すべきだ。

 

人員集中配置を評価 ―高度急性期

コロナ重症感染者に対する対応の遅れも踏まえ、高度急性期医療が手当・補強された。ICU、救命救急入院料2、4について、算定上限日数は通常14日だが、体外式心肺補助(ECMO)治療等の患者は25日に、臓器移植(心臓、肺、肝臓)の患者は30日に延長された。ただし、早期からのリハビリや栄養管理に係る加算届出が必要となる。
人工呼吸やECMO治療に関わる評価が見直されるとともに、入院患者の転院搬送の評価において、ECMO装着等の重症患者が新たに評価された。
また、人員の集中的配置に向けて、ICU、救命救急入院料2、4において、3年以上のICU経験などを積んだ看護師や臨床工学技士等を配置し、特殊な治療法等(ECMO、補助人工心臓等)の患者を15%以上受け入れた場合、別途加算で評価される。
関連して、ICU・HCU設置や救急搬送件数年2,000件以上(300床未満は平均1床年6件以上)など高度急性期並みの急性期医療を提供する医療機関(7対1病棟届出が前提)は、急性期充実体制加算として評価される。ただし、感染対策向上加算1の届出や敷地内薬局がないことなどが要件である。
高度急性期への手当ては不可欠だが、対象となる病院は相当限られそうだ。

感染者受入れ、発熱外来に限定 ―外来、診療所

平時の感染防止対策の推進に向けて、病院等を対象とした感染防止対策加算が感染対策向上加算(以下、感染加算)に再編されるとともに、診療所を対象とする外来感染対策向上加算(以下、外来加算)が新設された。感染症治療を担う体制を取る医療機関の感染対策向上と連携強化を図る狙いだ。
感染加算のうち、加算1(入院初日710点)を算定する医療機関を中心に、加算2(同175点)、加算3(同75点ほか)を算定する病院や、外来加算(1人につき月1回6点)を算定する診療所の間で連携して感染対策を進める。
加算1を取る病院が加算2、3、外来加算を算定する医療機関に助言した場合、指導強化加算として評価し、加算2、3、外来加算を算定する医療機関が加算1算定病院への感染症発生状況等の報告をした場合、連携強化加算として評価する。厚労省の院内感染対策サーベイランス(JANIS)等への参加についても評価するなど、院内対応・連携や定期調査・報告等を通じて感染症蔓延・予防対策の増強を図る。
加算の種類に応じて要件は異なるが、感染患者の入院受け入れ、発熱外来体制(患者動線区分、自治体HP公表)など感染症患者(疑い含め)を直接診療する医療機関が対象となる。感染防止対策部門の設置や新興感染症発生を想定した訓練の主催・参加、会議等への参加なども求められハードルは高い。外来加算は1人医師の小規模診療所では厳しい上、評価も低いと言わざるを得ない。
全ての医療機関が患者の感染可能性を踏まえて日常診療に取り組んでいる。実施コストに見合ったPCR・抗原検査の点数設定とともに、感染防止対策に係るコストを正当に評価して、先の外来等感染症対策実施加算のように全ての医療機関で算定できる点数が必要である。