8割が原則義務化に反対—オンライン資格確認システム導入義務化アンケート結果

2022年8月12日~8月31日分

8月10日の中医協総会で紙レセプト以外の医療機関・薬局にオンライン資格確認のシステム導入を原則義務化する療養担当規則の改正案が答申されたことを受けて保団連は、緊急アンケートを実施しました。

集計結果をお知らせします。

調査期間:2022 年 8 月 12 月-8 月 31 日
調査方法:
アンケートは、保団連メールマガジンに登録している会員(医科 2493 人、歯科 1703 人
総計 4196 人)に送付。
回答数:489(医科診療所 241 件、歯科診療所 235 件、病院 12 件、N/A 3 件)
(回答率 11.6%)

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結果概要

 

オンライン資格確認の原則義務化(反対:78.6%)、保険証の原則廃止(反対:75.5%)と約8割が反対した。オンライン資格確認のシステムについて、64.9%が「必要性を感じていない」と回答しており、「マイナンバーカードの紛失・漏洩が心配(71%)」、「セキュリティ面の不安(67%)」などセキュリティ・情報漏洩への懸念が強い。また、「設備投資やランニングコスト上の負担(85.3%)」、「窓口の事務負担増(70.4%)」、「設備投資やランニングコスト上の負担(85.4%)」など費用負担への不満も強い。

レセプト請求方法は、「オンライン請求(46.9%」」と「電子媒体請求(45.9%)」がそれぞれ半々だが、資格確認システムの導入状況について、「運用を開始した」が17.9%に留まる一方で、「導入を検討・予定しない」が45.4%となった。

運用を開始した医療機関の33%でトラブルが発生している。具体的なトラブルは、「データ上のトラブル(71%)」、「機器関連のトラブル(41.9%)」などデータや機器のトラブルが大半を占めた。

 回答者の97.5%が医科・歯科診療所、年齢層は40代が11.7%、50代が30%、60代が42.4%、70代以上が14.2%となった。

 

まとめ

8月10日中医協で答申された原則義務化は紙レセプト請求の医療機関を除き、9割超の医科・歯科診療所が対象となる。8月14時点で運用開始した医科診療所は18.1%、歯科診療所は18.8%に過ぎず、システムの運用を開始していない診療所(紙レセプトは除く)は約12万件に上る。

緊急調査では、現役の医師・歯科医師の約8割がオンライン資格確認のシステム導入原則義務化に反対し、64.9%が「必要性を感じていない」と回答した。回答医療機関の92.8%が「オンライン請求」もしくは「電子媒体」で保険請求しており、電子技術の活用そのものに「消極的」なわけではない。

現行の被保険者証による資格確認で特段の支障は生じていない上、義務化までして医療現場に導入すべきシステムなのか、多く医師・歯科医師が疑問を感じている。緊急調査でも、オンライン資格確認のシステム導入について、セキュリティ・情報漏洩への懸念も強く、費用負担増等への不満も強いことが示された。深刻なのが、既に運用を開始している医療機関の約3割でトラブルを抱えており、その7割がデータ上のトラブルと回答したことである。この状況で9割を超える医療機関に残り半年足らずで、システムを強引に導入すれば混乱は必至である。

厚労省は8月24日の三師会との合同説明会で8月10日の中医協付帯意見に沿って、年末までの導入状況を踏まえ再検討するとした。政府は、「医療の質向上に資する」と一方的に主張し、保険医取り消しや指導も示唆しながら、義務化を押し付けるのではなく、医療現場の声に耳を傾けて、原則義務化の方針を撤回すべきである。

<各設問と結果>

問1.年齢(N=486)

年齢は50代が30%、60代が42%と現役開業医の年齢層とほぼ同等となった。

<医療機関の区分について>

問2.区分(N=486)

医科診療所49.6%、歯科診療所48.4%と半々の回答となった。

 

問3.レセプト請求方法について教えてください(N=484)

レセプトの請求方法は、電子媒体請求45.9%、オンライン請求46.9%と半々となった(グラフ)。

医科診療所では、オンライン請求が68%、電子媒体請求が29%となった。歯科診療所ではオンライン請求が23%、電子媒体請求が64.6%となった。

厚労省報告(22年3月時点)では、医科診療所は、オンライン請求が72.8%(約6万2000件)、電子媒体請求が23.7%(約2万件)、歯科診療所は、オンライン請求が24.6%(約1万7000件)に対し電子媒体請求は、66.8%(約4万5000件)であり、保団連緊急調査の回答割合とほぼ相似している。

問4.オンライン資格確認システムの導入状況について(N=485)

オンライン資格確認の「運用を開始している」が17.9%、導入作業は完了しているが運用していない」が3.9%、「カードリーダーを申し込んだ」が20%、「カードリーダーを申し込んでいないが導入を検討中」が14.7%、「導入を検討していない、予定はない」が45.4%となった。

※22年8月14日時点の厚労省報告では、顔認証付きカードリーダー申込数は、医科診療所52.1%、歯科診療所が55.0%であるのに対して、保団連緊急調査は、リーダー申込割合が41.8%である。「運用開始施設数」について、厚労省報告では、医科診療所が18.1%、歯科診療所が18.8%であるが、緊急調査は17.9%となり、厚労省報告とほぼ同じ割合となった。

問4-1.(運用開始済みの方のみ回答)オンライン資格確認の運用に際してトラブルはありましたか(N=94)

オンライン資格確認のシステムを運用開始していると回答した方のうちトラブルがあったと回答した方は33%となった。

問4-2.(問4-1で「あった」と回答した方のみ回答)トラブル内容はどのようなものですか(N=31)

トラブルの内容として、「データ上のトラブル(基金等での登録データの不備・更新の遅れなど)」が71%と多い結果となった。「機器関連のトラブル」が41.9%と続いた。この状況で9割を超える医療機関にシステム導入すれば大混乱を招くことは必至である。

問5.オンライン資格確認に対する懸念や考えについて(複数回答) (N=466)

64.9%が資格確認システムの「必要性を感じていない」と回答。「マイナンバーカードの紛失・漏洩が心配」が71%、「セキュリティ面の不安」が67%と患者がマイナンバーカードを医療機関に持ち込むことを前提とした資格確認システムに様々な不安を抱いていることが分かった。また、「設備投資やランニングコスト上の負担」が85.3%、「窓口の事務負担増(患者への案内・支援)」が70.4%、設備投資やランニングコスト上の負担が85.4%となり、人的対応、経費面での対応に強い不満が示された。

問6.オンライン資格確認のシステム導入原則義務化について(N=481)

オンライン資格確認のシステム導入を原則義務化する政府方針について、78.6%が反対し、賛成はわずか7.5%にとどまった。

問7.保険証の原則廃止について(加入者が申請すれば保険証を交付する)N=486

保険証の原則廃止の政府方針について、75.5%が「反対」し、賛成は8.6%に留まった。