複雑すぎる「配慮措置」 75歳以上負担2割化

医療機関の事務作業増まねく

 全国保険医新聞5月25日号より

今年10月から実施されようとしている75歳以上の窓口負担2割化では、開始後3年間の「配慮措置」が予定されている。しかしその内容は複雑すぎて、患者の混乱や医療機関の事務作業増を招くことが懸念される。深刻な受診抑制をもたらしかねない75歳以上の負担増そのものを中止すべきだ。

「負担増加額」に 3000円の上限

75歳以上の窓口負担2割化の「配慮措置」は、負担増対象者の外来受診の「負担増加額」(1割負担と2割負担との差額)を1カ月で3000円以内に収めるというもの。高額療養費の仕組みで行われる。10月に予定される負担増開始後、3年間に限って講じられる。
同一の医療機関での受診で、負担増加額が1カ月3000円を超えた場合に、超過額が現物給付される(医科・歯科は同一の医療機関でも別算定)。
複数の医療機関での受診や薬局での支払いを合算した負担増加額が1カ月あたり3000円を超えた場合も、4カ月後を目途に超過分が払い戻し(償還払い)される。
償還払いには、高額療養費の口座が利用される。口座が登録されていない患者は、各都道府県の後期高齢者医療広域連合や市区町村から郵送される申請書を使って手続きを行うこととなる。
厚労省は医療機関向けに配慮措置の案内を出している(図)。しかし、それらを参照しても全体像の把握は非常に困難だ。

患者誤解のおそれ
3000円に収めるのは、「窓口負担の上限」ではなく、あくまでも2割化による「負担増加額」だ。この点は患者の誤解を招きやすい。また、2割化の対象となるのは、75歳以上で課税所得が28万円以上かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が200万円以上など、後期高齢者医療制度の被保険者の約2割である。
負担が1割、2割、3割の患者が混在するうえ、複雑な配慮措置が講じられ、患者への説明や医療機関の事務作業等の手間が大きく増えることが懸念される。
2割化は中止に
そもそも「2割化」では、昨年の日本高齢期運動連絡会の調査では、75歳以上の3割近くが通院回数や受診する診療科を減らすと回答するなど、深刻な受診抑制をもたらしかねない。限定的で複雑すぎる「配慮措置」ではなく、負担増そのものを中止すべきだ。
全国保険医団体連合会(保団連)は10月からの「2割化」を阻止するため、署名の取り組みや国会議員への働き掛けを強めている。