2022年度改定を踏まえた歯科医療のこれからを考える 夏季セミナー

保団連副会長 田辺 隆

保団連夏季セミナー・講座4
講座4は田辺副会長を講師に迎え、2022年度の歯科診療報酬改定の問題点や歯科医療費の総枠拡大運動の重要性などが語られ、ウェブ参加者も含む活発な討論が行われた。
田辺氏は冒頭、22年度改定の歯科改定率は0・29%であり、金額にして90〜100億円という極めて少ない財源で行われたことを、歯科医療費抑制の歴史を振り返りつつ指摘。その上で、少ない財源ではあっても、取り組めるようになったものに積極的に取り組まなければ、点数も引き上がらないとして、改定内容とその問題点について、中医協等の審議の経過にも触れながら詳細に解説した。
初・再診料の3点引き上げについては、引き上げ自体は評価できるが、実際の歯科医療機関での院内感染対策費との関係では不十分であり、大幅な引き上げ、少なくとも医科歯科格差は解消すべきとした。また、歯初診の届出が約95%に上る状況で、施設基準を設ける必要はないとも指摘した。
金パラ「随時改定」の改善は、保団連の要望が大きく反映され、運動の成果と評価。ただし、投機対象である貴金属を使用する限り「逆ザヤ」の抜本解決は難しいとし、代替材料の保険導入の必要性にも言及した。
新規材料の保険導入に関連して、金属アレルギー患者へのジルコニアによる前歯部CAD/CAMブリッジが見送られたことは極めて残念と評価した。期中での導入の仕組みなども解説して、メーカーへの働き掛けを強めるなど道筋はあると展望を示した。
自由診療の保険導入推進を
自由診療の保険導入について、「保険適用範囲の拡大」と「窓口負担の軽減」は患者・国民の最大の願いとして、国民にとってより良い歯科医療を目指す立場から、保団連として推進すべきと強調。診療報酬改善や保険適用範囲の拡大、患者負担軽減を一体的に進め、「歯科医療費の総枠拡大」を目指す保団連運動ならではのメッセージが力強く発信された。
フロア討論では、是正すべき診療報酬の不合理や、オンライン資格確認、「国民皆歯科健診」等情勢課題への対応、保団連要求を実現するための取り組みの進め方など、多岐に渡る意見が出された。特に、要求実現のためのアプローチとして、学会への働き掛けを強めるべきという提案が深く議論された。保団連要求と合致する学会の提案を後押ししていくため、意見書の送付や懇談の呼び掛けを強める重要性が共有された。
(理事 池 潤)