【主張】防衛費拡大を中止し、医療・社会保障の充実を

【主張】防衛費拡大を中止し、医療・社会保障の充実を

 昨年12月、政府は「敵基地攻撃能力の保有」などを明記した「安保3文書」を閣議決定した。これは、日本が武力攻撃を受けていなくても、集団的自衛権の行使で敵基地を攻撃することであり、先制攻撃となる。戦後の憲法9条を基軸とした専守防衛の外交政策を大きく逸脱する。歴代政権は、攻撃的兵器の保有はいかなる場合も許されないとしてきたが、購入予定の長射程ミサイル「トマホーク」などは先制攻撃につながり、東アジア地域での軍事的緊張関係を強めることになる。
2023年度から5年間で防衛費の総額を43兆円にしようとしているが、そのためには新たに17兆円の財源を捻出する必要があり、歳出改革や税外収入、増税、建設国債発行で賄うという。歳出改革では、既に年金、医療、介護などで社会保障の「改悪」が続いているが、23年度は社会保障費の自然増を1500億円圧縮するとし、昨年10月の後期高齢者の窓口負担2割化の強行に続き、保険料を引き上げようとしているし、介護保険ではさらなる利用者負担増と給付削減を狙っている。第8波の感染が拡大する中、防衛費捻出のため、医療・介護・コロナ対策予算を大幅削減することは命・健康を守る医療者として断じて容認できない。
政府は、税外収入として政府資産の売却や医療関係の積立金、コロナ対策費の未使用分などを「防衛力強化資金」として別枠で蓄え、5年間で5兆円強を確保しようとしているが、これは一時的な税額に過ぎず、将来的には増税・社会保障のさらなる切り捨ては避けられない。増税は、法人税、たばこ税、復興特別所得税を流用するという。岸田首相は、増税について「国民の責任」と強弁している。違憲の疑いが強い軍拡財源が国民の責任とは言語道断だ。さらに戦後初めて防衛費のために禁じ手の建設国債を発行しようとしている。
毎日新聞が昨年12月に実施した世論調査では、防衛費の大幅増に「賛成」は48%でやや多いが、財源としての増税、社会保障費の削減、国債発行には52~73%の人が反対である。軍事大国にはすべきでない。日本が取り組むべきことは、戦争準備ではなく、有事が起こらないように、憲法9条を生かした平和の外交戦略を進めることであり、人間の安全保障のために、社会保障を充実させることである。