総務相 暗証番号なしマイナカードを提案

暗証番号なしマイナカードについて

 

全国保険医団体連合会

 

松本総務相は、7月4日の記者会見で暗唱番号なしのマイナカードを11月頃から発行できるよう検討していると述べました。認知症などで暗証番号の管理に不安がある方が向けとの説明です。暗証番号なしマイナカードの機能は、本人確認機能とマイナ保険証としての機能に限定されると説明しており、医療機関では、顔認証もしくは目視確認でオンライン資格確認を行えると説明しました。

マイナ保険証はマイナカードに搭載された公的個人認証(利用者用電子証明書)を利用してオンライン資格システムにアクセスするものです。特養、老健など利用者・入所者のマイナカードの管理が困難との批判を受けた対応のようです。現時点の情報で医療へのアクセスが困難となる点を指摘します。

 

1.トラブルが多い顔認証を続けるのか?

 

顔認証付きカードリーダーのエラーは、多発しています。保団連推計で保険証廃止後に50万件発生します。顔認証システムがセンサーなので逆光などで認証エラーが生じやすくなるということ、マイナカードの顔画像そのものの精度や利用者側のシステムに不慣れなこともありますが、カードリーダーの機種による問題点も指摘されています。「顔認証」による本人確認を第一義的にした対応は患者の苦悩を拡大させるだけです。

 

2.施設、在宅への影響

 

健康保険証が廃止されると特養、老健などの施設でマイナカード(マイナ保険証)を預かり、受診の付き添いや処方薬の受取の際にマイナ保険証を利用することになります。「顔認証」を利用する場合は本人が医療機関に出向かないと対応できません。「顔認証」ありきだと常時使用している処方薬を取りに行く際も職員がカードを預かり代行して取りに行くことができなくなります。在宅高齢者への訪問診療などは、2024年4月に訪問診療型のアプリを開発し在宅医療の現場に普及するとされています。

医療機関外来に設置された顔認証付きカードリーダーは、有線かつ閉域回線網でセキュリティ対策を担保していると説明しています。一方、訪問診療等では、汎用性カードリーダーとスマホアプリを入れて、無線でオンライン資格確認を行うことが想定されており、セキュリティ対策上の懸念が指摘されています。いずれにしても暗証番号を読み取るタイプの資格確認が想定されており、「顔認証」利用は想定されていません。

 

3.保険証の「目視確認」で十分

 

「顔認証」が困難な場合でもマイナカードの目視確認だけで保険診療が受けられるとする。医療・介護の現場から「暗証番号の施設等での管理できない」「暗証番号を覚えられない」との批判を受けての総務省の対応の一環と思われます。

しかし、施設の職員・利用者・家族が健康保険証で十分であり、マイナ保険証を拒否しているにも関わらず、マイナカードを押し付ける対応にもはや「マイナハラスメント」と言っても過言ではありません。

健康保険証は紛失しても無料ですぐに発行されます。一方、マイナ保険証は紛失した場合、再発行に手数料1000円必要ですし、再発行に1カ月以上の期間を要します。

総務省のスキームは寧ろ現行の健康保険証で十分対応できること、健康保険証の優位性を示唆したものです。

 

 

参考:松本総務相記者会見質疑

 

<マイナンバーカードと健康保険証の一体化>

 

問: マイナンバーカードに関して1点伺います。来年秋の健康保険証の廃止に向けて、福祉施設などから、入所者が保険証を使う場面も多いにもかかわらず、カード取得が難しい人が多くいるという声が出ています。また、現在、健康保険証を入所者からお預かりしているような施設で、暗証番号の管理の必要性から、管理について懸念する声が出ていますが、この点について、大臣の現状認識と今後の対応についてお願いします。

答:

これまでも、このマイナンバーカードを進めるにあたっては、福祉関係の方をはじめ、様々関係をされると思われる方々のお声をお伺いし、意見交換などもさせていただいてきたところでありますが、マイナンバーカードに関しては、本年2月に公表された「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会」の中間とりまとめに基づいて、総務省ではその具体化に取り組んできているところでございます。

今年3月には、病気や身体の障害などやむを得ない理由によって、申請者が庁舎等に出向くことが困難な場合における代理交付の仕組みについて、事務処理要領の改訂を行い、活用できるケースの拡充・明確化などを行ったところでございます。

また、代理人を頼める方がいない場合であっても、カードを円滑に取得していただけるように、出張申請受付を推進することにしておりまして、現在、福祉施設などへの出張申請受付などのマニュアルを作成中で、できるだけ早くこれをまた各自治体に配っていきたいと思います。

さらに、先ほども申しましたように、福祉施設などからは様々なご意見をいただいておりまして、認知症などで暗証番号の管理に不安がある方が、安心してカードを利用でき、代理交付の際の代理人の負担軽減にもつながるように、暗証番号の設定が不要なカードの申請受付・交付について、今年11月頃から開始できるように、今検討をしております。このカードは、暗証番号は利用できませんが、顔認証・目視確認によりオンライン資格確認を行うものとなってまいります。

こうした取組によって、できる限り多くの方にカードを取得していただけるように、環境の整備を着実に進めてまいりたいと考えております。