資格確認書を誰に発行していいかわからない? なんて!! 前編

岸田文雄首相は、8月4日の記者会見で「マイナ保険証を保有していない人に申請によらず資格確認書を交付する」と宣言し、マイナ保険証を持たない人に対し発行する資格確認書の取扱いについて、(1)当分の間、申請によらず交付、(2)マイナ保険証の利用登録の解除を可能にする、(3)有効期限を最長1年から最長5年に延長すると説明しました。

これに対し、保団連は8月4日の声明を発出しました。
▽資格確認書の取扱い見直しだけでは、マイナ保険証によって引き起こされている現場のトラブルは解決しない。
▽資格確認書を申請無しで交付するとしたが、対象者がマイナ保険証を持たない人に限定されており、あくまで「当分の間」の対応である。全被保険者に保険証を交付する現行の健康保険証の運用からは大きく後退する。
▽現行の健康保険証の存続を強く求める

 

改正法上はどのような位置づけか?

6月2日に成立した改正健康保険法等では「被保険者が電子資格確認(マイナ保険証による資格確認)を受けることができない状況にあるとき、被保険者は保険者に資格確認書の交付を求めることができる」としています。
法律の本法では、被保険者が申請しないと資格確認書がもらえないとされました。一方で経過措置として附則15条「職権交付」を規定し、保険者が「必要があると認めた時は、当分の間、職権で被保険者に対して資格確認書を提供することができる」としました。
参考 保険証廃止 法案の問題点 全国保険医団体連合会

「申請不要」キャンペーンはいつまで?

附則15条に基づく職権交付は法律上「当分の間」としています。しかし、職権交付がどの範囲を対象にするか、いつまで対応するのかは保険者の判断(裁量)となります
では申請によらず資格確認書を交付する特別対応のキャンペーン期間はいつまでなのか?こんな疑念に対して、厚労省は8月23日の立憲民主党国対ヒアリングにおいて以下のように文書回答しています。
「現行の保険証からマイナ保険証への移行期において、円滑な移行を図るため、当分の間、マイナ保険証を保有していない方等に対し、申請によらず交付する運用とする」

政府としては、健康保険証廃止による移行期の混乱を防ぐための措置であると説明しています。
そこで、岸田首相が会見で述べた「申請不要」の措置はあくまで移行期だけの対応であり、「移行期が終了すれば元の申請主義戻るのではないか」などの疑念が生まれます。
記者ブリーフィングや立憲民主党国対ヒアリングでは厚労省は、「あくまで改正法の枠内の対応」「保険者の職権交付による対応」と説明しています。
つまり、法律上は、職権交付は医療保険者の判断(裁量)で決められる事項です。「申請によらず資格確認書を交付する」主体は、医療保険者であり、医療保険者が「必要と認めたとき」の対応でよいことになります。

「移行期」は2025年秋まで 保険者により対応異なる!?

2024年秋に保険証を廃止して2025年秋までの1年間は経過措置となります。首相の言う「移行期」は広く解釈しても25年秋までとなります。それ以降、更新を迎えた資格確認書は申請が必要となるのか? 厚労省からは明確な回答はありません。なぜならば、法律の附則15条に基づく職権交付はあくまで保険者の裁量だから国が一律に定めることができないからです。日本には約3400の保険組合(保険者)がいますので、所属の保険組合によって対応が異なることもあり得ます。

「不安払拭」と言うなら保険証を残して

岸田首相は、「不安払拭」を強調していますが、そうであれば、政府側の曖昧かつ誤解を招くような説明に留めるのではなく、国会審議や記者会見等で国民に対し、法的根拠に基づく対応を明確に説明すべきです。
すべての国民は、公的医療保険制度を利用する権利を有しています。医療保険制度を円滑・スムーズに運営するためには、健康保険証を発行・交付は欠かせません。

いつでもどこでも安心して医療が受けられる状態を作るのは国の責任です。何も問題なく機能している健康保険証を廃止して、患者・国民、保険者に新たな負担を課してまで資格確認書を発行することは、政府として責任放棄に等しい対応です。

6月2日の改正法案の瑕疵を潔く認めて、政府・与党の責任で健康保険証を残す法改正に踏み切るべきです。

後編へ続く