1億6000万件の総点検―うち4000万件は過去の被保険者情報の点検だった!

総点検により不安払拭は実現するか

岸田文雄首相は臨時国会で「国民の不安払拭が大事だと思うからこそ、今、総点検、そして修正作業を進めている。11月末をめどにこの作業を進めて不安払拭につなげたい。この結果を確認した上で必要な対応を考えていく」と答弁しました。

政府のマイナンバー情報総点検本部は、10月6日に医療保険の紐づけミスに関する点検の結果、これまでに8544件の誤登録が判明したことを公表しています。厚労大臣は10月10日の記者会見で保険者による自主点検とは別に紐づけミスが判明したことから、すべての被保険者のマイナンバー紐づけミスを全件チェックする方針を示しています。具体的には、医療保険者向け中間サーバーに登録されている1億6000万件の点検・チェックを実施するとしています。具体的には、被保険者情報の5情報とJ-LISが保有する住民記録の5情報を突合する作業となります。厚労省は24年3月末までに点検・チェックを目指すとのスケジュールを示しています。

4000万件は薬剤・診療情報のチェック

 日本の人口が1億2000万人ですが、それより4000万件多い1億6000万件のチェックを行うなぜか?10月26日の厚労省要請でその一旦が明らかになりました。2021年10月からオンライン資格確認システムを利用して、薬剤・診療情報、特定健診情報を取得できます。厚労省担当官から「1億6000万件の点検は、有効な被保険者情報(1億2000万件)とは別に過去の被保険者情報(4000万件)も点検することとした」との説明がありました。

つまり、4000万件は既に資格喪失した過去の被保険者情報であるとのことです。なぜ過去の喪失済みの被保険者情報を総点検するのかについて、厚労省は、「資格喪失した被保険者情報に別人のマイナンバーが登録されていた場合に、被保険者情報に付随する薬剤情報等の医療情報がマイナポータル等で表示される可能性があるため」としました。

薬剤・診療情報等が別人の可能性?

①4000万件は過去の被保険者情報(被保険者が過去に所属していた保険者における被保険者情報)

②マイナポータル等での薬剤・診療情報、特定健診情報の閲覧・取得は当該被保険者の過去の被保険者情報に付随する情報を閲覧・取得していることになる。

③オンライン資格確認システムのデータ管理は、基本的には個人単位化された被保険者番号を管理番号としている。

④過去の被保険者情報に付随する薬剤・診療情報、特定健診情報が別人の情報となる可能性があるため、4000万件の過去の被保険者情報も含めて突合・点検が必要となる。

 

マイナポータルを見ても分からない!?

マイナポータルでは現在、有効な被保険者資格に関する情報、過去の薬剤・診療情報、特定健診情報が見れます。

現在も過去も同じ保険者(職場)であれば特に変化はありませんが、仮に転職等で保険者が変更となった場合、被保険者情報は現在加入している保険者が管理している情報ですが、過去の薬剤情報等は過去に所属していた保険者(職場)が管理していた情報の可能性があります。その場合、過去に所属していた保険者が当該被保険者とは別人のマイナンバーを登録していた場合、現在の被保険者情報が正しくても、別人の薬剤情報が表示されることになります。

デジタル庁などはマイナポータルをセルフチェックすれば本人情報か否かを確認できると確認を呼び掛けていますが、閲覧できる情報すべてが正しいとは限りません。一見して自分の情報と思っても、過去情報だけ別人の情報である場合があるからです。過去情報も含めて全件チェックが完了しないと、薬剤情報等が本人の情報であることの真正性を担保したことになりません。

 

関連資料

マイナ総点検・徹底追及シリーズ – 全国保険医団体連合会 (doc-net.or.jp)

【10.26厚労省要請(動画配信中!)】マイナ総点検を徹底追及! 「不安払拭」は保険証残してこそ – 全国保険医団体連合会 (doc-net.or.jp)