【令和5年補正予算】トラブルだらけのマイナ保険証推進に887億円投入

 政府は、11月10日に2023年度補正予算案を閣議決定しました。厚労省所管の一般会計の総額は1兆4,144億円です。マイナ保険証推進に係る予算として「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に向けた取組の推進」で 887億円されました。そのうち、トラブルが相次ぎ利用率が4.54%(9月)まで低下している「マイナ保険証利用促進のための医療機関等への支援」で217億計上されました。同補助事業は、医療機関に対する支援で1医療機関あたりの金額等は明らかにされていません。

 補助対象や補助の仕方は23年10月のマイナ保険証利用率を基準とし、24年1月~11月の期間で前半・後半に分けて、月平均利用率が10月の利用率に比べて増加した場合が補助対象となり、マイナ保険証利用率が向上した医療機関に支払基金から支払われます。マイナ保険証利用で薬剤情報を閲覧した場合の診療報酬上の加算(DX加算)が算定できますが、国費を投入しマイナ保険証の利用促進を図る政策の妥当性が問われます。

 マイナ保険証が患者・国民にとって便利で良いものであれば、補助金投入は不要です。また、キャンペーンを張らなくても患者が利便を感じれば利用促進が進みます。健康保険証で十分なため医療機関での利用までに至らないもしくは、利用してトラブルに見舞われたため二度目は使わないというのが実態ではないでしょうか。マイナカード取得はあくまで患者の任意選択によるものであり、税金まで投入してマイナ保険証の利用促進策に医療機関を駆り出すべきではありません。

国調査でも半数がメリットなし

 政府はこれまでにマイナポイントを国民一人あたり2万円分を積み上げ、マイナカード取得キャンペーンを張りましたが、結果として5000億円分が余りました。また、マイナカード保有者は9000万人を超過し、マイナ保険証利用登録された方が7000万人に及んでいますが、医療機関窓口でマイナ保険証を利用する患者は直近9月でオンライン資格確認全体のわずか4.54%にとどまっています。

厚労省は、11月10日の中医協において、マイナ保険証の利用に関して医療機関・患者への調査結果(調査期間は23年7月から9月)を報告。マイナカードの健康保険証利用による診療情報・薬剤情報・健診情報を「活用した」病院は29.6%に過ぎず、68.2%が「活用していない」と回答しました。また、「活用している」と回答した病院の51.1%が患者にとってメリットは「特にない・わからない」と回答しました。病院自体の活用効果は42.4%が「特にない・わからない」と回答しています。

システム改修等経費とは

「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に向けたシステム改修等経費」で367億も計上されました。マイナトラブルを受けてシステム改修が必要とされた予算です。マイナ保険証によるオンライン資格確認システムは23年4月から既に義務化され開始しています。本格運用早々の5月からマイナトラブルが続出し、システム改修が必要なレベルに追い込まれた制度は前代未聞です。システムを停止し、総点検するなどマイナ保険証の運用を立ち止まるべきです。「マイナンバーカードと健康保険証一体化周知広報事業/コールセンター設置」で41億計上されました。

ア 各保険者のシステム改修:資格確認書や資格情報のお知らせを交付する機能 等
イ 負担割合相違:負担割合相違を解消するための機能 等
ウ 資格情報のお知らせ等の送付:加入者への資格情報のお知らせ等の送付 等

ア「資格確認書・資格情報のお知らせを交付する機能」は、保険者が負担する印刷・郵送代ではなく、発行するために必要な保険者側のシステム改修の費用です。現行の健康保険証を残せば不要となるコストです。

イ「負担割合相違を解消するための機能」も保団連がマイナトラブル調査で発覚した負担割合の誤登録を解消するためのシステム改修経費となります。現在、全保険者を対象に再点検を求めていますが、各保険者における経費は対象外となっていません。これもマイナトラブルの一つで、マイナ保険証・オンライン資格確認システムに関わるトラブルです。健康保険証を利用すればトラブルは生じません。

ウ「資格情報のお知らせ等の送付」は、加入者へ資格情報のお知らせ等を送付する郵券代を含んだ必要です。資格情報のお知らせはマイナ保険証保有者(7000万人)に送付する経費となります。マイナトラブルを防ぐためにマイナ保険証保有者にわざわざ健康保険証と同内容の券面をもう1枚持たせることになりました。健康保険証があれば不要なコストであり、資格情報のお知らせは毎年送付する保険者もあるため補正予算の1回限りで済むのか大いに疑問が残ります。

サイバーセキュリティ26億、医薬品安定供給21億 マイナ推進と桁違い

補正予算でマイナ保険証推進に887億も大盤振る舞いする一方、ますます深刻になる後発医薬品の供給不安をはじめとする医薬品安定供給対策にはわずか21億しか投入されていません。また、国がオンライン資格確認などオンライン化を義務化する一方で対策が急務なサイバーセキュリティ対策にも36億円程度の投入にとどまっています。医療機関のカルテがサイバー攻撃を受けて診療停止に追い込まれ身代金を要求されるなど対策は急務です。マイナ推進予算とはけた違いの金額です。