【補正予算】マイナ推進で1800億円投入 介護処遇改善だと月3万円の賃上げが可能 

11月24日に総額13兆2,000億円の補正予算が衆議院本会議で採決され、与党(自民党・公明党)に加え、野党(国民民主党、日本維新の会)も賛成しました。一方、立憲民主党、日本共産党などの野党は補正予算に反対しました。

「マイナカード、マイナ保険証推進」だけで総務省関連(899億円)、厚労省関連(887億円)と約1800億円にのぼります。
厚労省 令和5年度補正予算
総務省 令和5年度補正予算

補正予算1800億を巡り、日刊ゲンダイが11月15日に「マイナ利用促進事業でドブに捨てる予算1800億円」との見出しで報じました。

日刊ゲンダイ マイナ利用促進事業でドブに捨てる予算1800億円…誤登録問題で不人気浮き彫り、焼け石に水

同記事では、保団連の竹田智雄副会長のコメントが紹介されました。

保団連の竹田智雄副会長(竹田クリニック院長)がこう言う。

「マイナ保険証の利用促進に900億円も投じたところで、利用率が上がるとは到底考えられません。焼け石に水でしょう。厚労省が今年7月末から9月中旬にかけて実施したマイナ保険証の利用に関する医療機関・患者への調査によると、マイナ保険証を活用している病院のうち51.1%が、患者にとってのメリットが『特にない・わからない』と回答しています。利用促進してもかえって制度設計のずさんさやメリットのなさが浮き彫りとなり、利用率が落ちている。紙の保険証廃止を撤回し、制度設計を見直すべきです」

厚労省関連のマイナ保険証推進予算887億円の見解は11月11日に配信した記事をご覧ください。

【令和5年補正予算】トラブルだらけのマイナ保険証推進に887億円投入

 

1日25人がマイナ保険証利用で渋滞?

マイナ保険証推進補助金の ④(2)カードリーダー増設補助について新たに次のことが分りました。

〇1台10万円も費用が必要で、トラブルが多い顔認証付きカードリーダーを購入しないと補助が受けられない。
〇2023年10月~2024年3月末のいずれかの月で使用実績で月500件以上(1日20件~25件)使わないと補助されない。
〇伊藤岳議員事務所に対する厚労省の補正予算説明では、月500件超えると医療機関窓口の渋滞が発生するため、2台目補助するとしています。

厚労省調査でもマイナ保険証利用率が増加すれば医療機関の受付窓口が渋滞して診療が回らなくなることを認めているようなものです。

介護処遇改善だと3万円の賃上げ可能

介護処遇改善は、1人月6000円の補助にとどまりました。令和6年2月~5月の賃金引上げ分としてわずか364億円しか計上されませんでした。仮にマイナ関連積み上げた予算1800億円を介護処遇改善に投入すると単純計算で月30000円の賃上げが可能となります。財務省は診療報酬マイナス改定を主張していますが、医療機関の物価高騰対策、医療従事者の賃金引上げに対応するため医療の本体に投入するなど財源の有効な使い方を模索すべきです。

参考:▽介護職員処遇改善支援事業等 364億円▽障害福祉サービス事業所における福祉・介護職員の処遇改善 126億円▽看護補助者の処遇改善事業 49億円と並びます。一方、ロボット介護、ICT普及などで351億円

総務省は899億の内訳すら非公開

総務省のマイナカード推進関連の補正予算は899億と厚労省に匹敵する金額になりました。使用目的は「 マイナンバーカードの利便性の向上、取得環境の整備等」です。

・「マイナンバーカードと各種カードの一体化」
・「在外公館における円滑なマイナンバーカードの交付等のためのシステム改修」
・「特急発行・交付の仕組みの構築」
・「福祉施設における出張申請受付等の推進」
・「郵便局も含めた交付体制の強化」

マイナカードはいらないと言っている介護・高齢者施設の利用者にも押し売りするための出張申請など不要・不急のマイナカード推進策ばかりです。伊藤岳議員事務所が内訳を確認したところ、総務省は「はっきりとした切り分けが難しい施策もあるので内訳はお示しできない」と回答したとのことです。厚労省補正予算では少なくとも事業ごとに切り分けて金額は示されており、金額の妥当性を評価できます。総務省は国民の代表である国会議員にすら明確な説明ができない点だけを見ても国民に対する説明責任を果たしていません。

 

8130億円 防衛費増額は聖域!?

防衛省関連の補正予算は過去最大の8130億円が計上されました。2022年度補正では4464億円のため約2倍に膨らみました。

敵基地攻撃能力の保有につながるスタンドオフミサイル、弾薬で1523億円、空母整備で624億円計上しています。

中でも馬毛島基地整備に2684億円計上されました。 南日本新聞(11月10日付)によると馬毛島自衛隊基地整備は総額でもうすぐ1兆円になるそうです。
財政審建議は診療報酬マイナス5.5%引き下げ(保険料負担2400億円削減)を求めましたが、防衛費増額はほぼ聖域扱いです。

コロナ禍の4年間、地域では病院と診療所が連携しながら平時の医療と有事の医療を支えてきました。診療報酬マイナス改定では平時の医療を支える医療機関をつぶすことになります。

保団連は、国民の命と健康を守る医療者を支える政治、医療・社会保障優先する政治への転換を強く求めていきます。