【シリーズ・薬の保険外し⑩】厚労省具体案で薬代患者負担が約2倍に

12月6日配信の共同通信報道によると長期収載品(特許切れ薬剤)の保険給付外しについて厚労省は、3つのパターンで薬剤差額を患者負担として徴収することを検討しているようです。

一番負担が重くなる先発品と後発品との薬価差額の50%を選定療養(保険給付外し)とした場合の試算あと現行負担より1.6倍も増加することがわかりました。

薬価差額の保険外し(50%適用)だと患者負担1.6倍に

前提:長期収載品(先発医薬品) 500円 後発医薬品 250円

 現行改悪後
後発医薬品250円250円
長期収載品(保険扱い) 500円375円
後発品(250円)+差額の2分の1(500円-250円)÷2
①窓口負担(3割)150円
500円×0.3
112.5円
375円×0.3
②保険外(自費扱い+消費税)0円137.5円
差額の2分の1(250円÷2)に消費税課税(125円×1.1)
③患者負担金額(①窓口負担+②保険外)150円250円

※自費扱いの分は消費税も課税される 125円×1.1=137.5円

 

血圧を下げる薬「 ca 拮抗薬」だと1.9倍

後発医薬品不足で先発医薬品に切り替えて患者負担増となった事例をシリーズ④でご紹介しましたが、実際の薬剤のパターンで推計すると患者負担は1.9倍になりました。窓口負担6割に相当します。

【試算 差額の50%から保険給付から除外する場合】

イルアミクス(後発品:薬価22.7円)→アイミクス(先発品:薬価69.2円)

血圧を下げる薬のCA拮抗剤の後発医薬品(イルアミクス)を先発医薬品(アイミクス)に切り替える

 現行改悪後
後発医薬品22.7円22.7円
長期収載品薬価(保険扱い) 69.2円45.95円(22.7円+23.25円
①窓口負担(3割)20.76円13.785円
②保険外(自費)0円25.575円(23.25円×1.1※)
③患者負担金額(①窓口負担+②保険外)20.76円39.36円

※保険外分は消費税課税 23.25円×1.1=25.575円

窓口で大混乱は必至

選定療養として保険外併用療養費を患者から徴収するには、以下の手続きが必要です。長期収載品の薬価収載の品目は令和4年で1700あります。後発医薬品は1万品目ほどあります。

医療機関もしくは保険薬局で長期収載品(1700品目)と後発品(10500品目)を書いた薬価表を目立つところに掲示して長期収載品を処方するごとに医師が患者に料金の説明をして同意を踏まえることが必要となります。

 

1.医療機関における掲示

この制度を取扱う医療機関は、院内の患者の見やすい場所に、評価療養又は選定療養の内容と費用等について掲示をし、患者が選択しやすいようにすることとなっています。

2.患者の同意

医療機関は、事前に治療内容や負担金額等を患者に説明をし、同意を得ることになっている。患者側でも、評価療養又は選定療養についての説明をよく聞くなどして、内容について納得
したうえで同意することが必要です。

3.領収書の発行

評価療養又は選定療養を受けた際の各費用については、領収書を発行することとなっています。

 

関連資料

 

「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」
令 和 4 年 3 月 4 日

【シリーズ・薬の保険外し⑨】保険外給付のルールから大きく逸脱してる