【シリーズ・薬の保険外し⑨】保険外給付のルールから大きく逸脱してる

医療上必要な診察、検査、投薬、入院料などの基礎部分は保険適用

厚労省は、先発医薬品(長期収載品)を使用した場合、長期収載品と後発医薬品の薬価差額を保険給付外(自費扱い)とした上で、その金額を窓口負担金とは別に患者から徴収を仕組みを導入しようとしています。

厚労省は、健康保険法第86条に規定された保険外併用療養制度の仕組みを活用するとしています。

保険外併用療養制度には「評価療養」と「選定療養」の2種類あります。厚労省は「選定療養」を「薬の保険外し」に適用しようとしています。

しかし、「選定療養」は、医療上の必要性が低いもので厚労大臣が定めた一定のルールの下、患者から保険給付外(自費扱い)として徴収できる制度です。

これまで対象範囲が拡大されてきましたが、一定のルールの基に対象範囲が区分けされてきました。

「選定療養」に関する厚労省の解説・資料では、診察、検査、投薬、入院料などの基礎部分は保険適用とし、差額ベッド代や予約診療など上乗せ部分を保険外としています。

今般の「薬の保険外し」は、薬価収載された医薬品を医療上必要に応じて医師が処方選択している事例になるため、これまでの保険外併用療養費のルールすら大きく逸脱するものです。

つまり、今般の保険給付外しは、「医療保険の基礎部分(本体部分)に無理やり「選定療養」を使い保険から外す」という道理もエビデンスも全くない政策です。

問題点をあらためて列記しました。

問題点

〇薬価収載された薬(長期収載、後発医薬品、新薬)を医師が患者の個別性や症状を踏まえて処方しており、処方薬は全額保険給付するのが保険診療の基本的なルール

〇しかも、「保険給付外し」される対象範囲(薬価の差額)は、用法・用量・効能・効果など適用内使用である。 いわゆる、薬の適用外使用ですらない。

〇長期収載品も後発医薬品もいずれも薬価基準収載(保険収載)している。医療上の必要性を判断し、医師が処方した保険収載されている医薬品について、長期収載品か後発医薬品かの種類を問わず、どちらを選択しても      保険給付されるべきである。そもそも薬価収載された医薬品を保険外併用療養とすることは保険診療の基本ルールから大きく逸脱する。

〇厚労省は、「180日超の入院」は選定療養(保険給付外)としている現行ルールを準用したいと説明している。しかし、「180日超の入院」はあくまで「入院医療の必要性が低いが患者側の事情により長期にわたり入院している者への対応を図る観点」を理由・基準として、選定療養(保険給付外)を適用している。

〇「医学的に入院医療の必要性が低い」との基準が設けられた「180超の入院」と、治療中の患者に適用内使用で処方しているため医療上必要なことが明らかな長期収載品の処方は明らかに違いがある。従って、選定療養(保険給付外)を適用するという理屈はかなり無理がある。

〇厚労省は、長期収載品と後発医薬品は生物学的同等性が担保されているから患者選択が可能としている。しかし、「生物学的同等性確保されている」という論拠について、保団連の厚労省要請(11月30日)でも厚労省医政局担当官から同等性が確保されているのは、薬価収載時点(PMDA審査)段階のみであること、有効成分は同じだが基材、添加物等の製造工程の違いにより実際は異なることを認めている。