【2024年診療報酬改定】財務省「診療所の経営状況は極めて良好」は現実と乖離

診療報酬改定を巡り、財務省は、昨年11月の財政審「建議」において、医科診療所(医療法人)の事業報告書を基に、コロナ補助金等を含んだ「経常利益率」が2020年度の3.0%から8.8%に伸びているとした上で、全産業やサービス産業(経常利益率3.1~3.4%)と同水準になるよう診療所の報酬単価を5.5%程度引き下げるべきと主張してきました。

コロナ禍で一番収入が落ち込んだ2020年を起点に比べること自体に悪意を感じます。診療所の経常利益率が伸びたのは、休日夜間返上でコロナ予防接種や発熱外来などに対応してきた結果です。感染拡大の中、コロナ対応に奮闘した結果、収支が伸びたから削れというのは不条理の極みです。

コロナ特例の影響を除けばむしろ経営環境は悪化

しかも、コロナ危機の下、診療本体に関わる医業利益率(2020~22年度の平均)ではコロナ特例の影響を除くと3.3%で中小企業と同水準です(日本医師会、11月22日会見)。むしろ、コロナ特例が大幅に縮減された一方、物価高騰によるコスト増で経営環境の悪化も見込まれます。診療所の診療報酬引き下げる余地はありませんでした。

厚労省の統計(医療経済実態調査)によると医科診療所(医療法人)の損益差額が0円~500万円未満の医療機関が16.9%と最頻区分です。

一方で損益差額が0円から500万未満の赤字法人が12.9%、500万円以上の赤字の法人が13.4%と赤字法人だけで医療法人の約25%を占めています。医療法人の施設数約4万のうち1万件が赤字経営を迫られています。財務省の「診療所の経営状況は極めて良好」との主張は全く現実と乖離しています。

医療現場から苦境の訴え相次ぐ

「昨今の物価高、人手不足による人件費の高騰分を価格転嫁出来ないため経営環境が厳しい」「今後医療機器価格も値上がりする。最低賃金を上げるのなら、診療報酬の診察料を大幅に上げるべきです」
「現在の医療の質を守るためには引上げは不可欠です。医療費を抑制しようとする日本政府の姿勢は世界の流れに逆行しています。国民の生命が優先です」「最低賃金が上がる、物価も上がる等、経営的にもますます苦しい状況になりました。このままいけば、人員を減らす必要があり、医療の質の低下を招く現状です」「まずは医療業界の雇用を守って頂き、医療崩壊を防ぎ、国民全員が健康で仕事をして、経済を活性化して欲しいと願います。経済が潤えば、少子化や高齢化も解決していくのではないでしょうか?」

これが医療現場の実態と悲痛な声です。

 

保団連は、医科診療所(医療法人・無床)の4分の1が赤字、歯科診療所(個人立)の4分の1は収支差500万未満と危機的状況にある中、診療所等の報酬引き下げは、地域医療のさらなる崩壊を招き、ひいては患者・国民の医療を受ける権利・基盤を掘り崩すと主張し、診療報酬引き上げを財務省にも要望してきました。