河野太郎デジタル大臣 自民党支持者に医療機関「通報」呼び掛け 「保険証出して」と言っただけで 

「利用率低迷」で医療機関に八つ当たり!?

報道によると河野太郎デジタル大臣が自民党所属国会議員に対し、マイナ保険証の利用ができない医療機関を国のマイナンバー総合窓口に連絡するよう、支援者に呼びかけることを要請する文書を出していました。文書では自民党支持者に対して医療機関を受診する際にマイナ保険証の利用を働きかけるよう求めています。マイナ保険証の利用を受け付けていなかったり、マイナ保険証利用者に紙の保険証の提示を求めたりする医療機関がある場合は窓口に連絡するよう呼びかけたり、「厚労省が必要に応じて事実確認する可能性もある」との記述もあります。

法令上、保険資格の確認義務が課された保険医療機関が被保険者(患者)に保険証の持参を呼び掛けたり医療機関窓口で健康保険証の提示を求める行為は当然の行為です。その行為を問題視し、支持者(患者)に当該医療機関の「通報」呼び掛けることは大問題です。「利用率低迷」の理由を保険証提示を求める医療機関にあるとし、「通報」を呼び掛けているとしたら八つ当たりもいいところです。河野事務所の行為は結果として、医療現場と患者の無用な対立を煽り混乱をもたらすだけでなく、マイナ保険証推進にも「水を差す」ことになります。通報呼び掛けは、昨年12月の大臣記者会見に続き二度目です。河野氏はまったく反省していません。河野氏は直ちに文書を撤回すべきです。

厚労省も「健康保険証」持参を呼び掛けている

少なくとも現時点で健康保険証は廃止されておらず、24年12月2日以降も最大1年間の経過措置があり健康保険証は何の問題もなく利用できます。厚労省は補助金や診療報酬を動員し、マイナ保険証の利用促進を強引に求めることで混乱が生じていますが、その厚労省でさえ医療機関に対して「マイナカード又は健康保険証」の持参を呼び掛けています。4月10日の医療保険部会に厚労省が提出した資料でも患者さんが持参するものとして「マイナカードまたは健康保険証」とし、医療機関等のホームページに掲載することを求めています。

マイナトラブルはいまだ続いている

マイナ保険証で資格無効となるなどトラブルがいまだに続いています。福岡県歯科保険医協会が3月末に公表した調査では7割の歯科医療機関で何らかのトラブルがありました。そのため医療機関側は保険証の持参や提示を求めています。それを不当な行為のように描き、国民に国への通報を促すことは問題です。2023年6月29日の医療保険部会で確認された方針「トラブル防止のため念のため保険証持参を呼び掛ける」はいまも変わっていません。厚労省もトラブル防止のために現行保険証を頼りにしているのが実態です。

参考記事

歯科医院7割「トラブルあった」 マイナ保険証導入で業務負担増える | 毎日新聞 (mainichi.jp)

【#保険証廃止勝手に決めるな】加藤前厚労大臣もトラブル防止のため「念のため保険証持参」を呼び掛けていた – 全国保険医団体連合会 (doc-net.or.jp)

「利用率低迷」の責任を医療現場に押し付けないで

3月のマイナ保険証利用率が5.47%と低迷する中、医療機関が保険証持参を呼び掛けているためマイナ保険証の利用率が低迷しているとの思い込みから自民党国会議員を通じて自民党支持者に「保険証出して」と窓口で呼び掛けた医療機関の「通報」を呼び掛けたのでしょう。マイナ保険証の利用率が上がらない理由は不便で何のメリットもないからです。健康保険証は医療機関窓口で職員に出すだけで受付ができるし、慣例で月1回医療機関に提示するだけで何の問題もなく医療が受けられます。医療機関と患者双方に合理的かつ簡便に保険診療が受けられる仕組みです。

保険証で既にデジタルデータを利用してる

厚労省は、マイナ保険証利用で医療情報・薬剤情報の閲覧・取得ができ、質の高い医療が実現するとうたい文句にしてます。しかし、保険証を提示するだけでオンライン資格確認システムは利用できるため保険証でもデジタルデータを利用できるというのが事実です。その上で、保険料支払いは月単位で保険の切り替わりは基本的には歴月単位のため、月に何度か受診される患者さんだと受診の都度、マイナ保険証を利用し毎回、保険資格を確認する必要性は乏しいです。医療機関側がオンライン資格確認を利用すればよいだけです。また、オンライン資格確認システムに登録されているデータは医療機関が先月分の診療行為の請求書として提出した古いデータです。古いデータを医療機関側が取得しても診療にはいかせません。しかも電子カルテ等にデータを落とし込めているので受診の都度、マイナ保険証を利用して医療情報・薬剤御情報をダウンロードする必要性もありません。マイナ保険証で享受できるとうたわれているものは、患者の個別同意があれば、すべて現行の健康保険証でも利用できます。ことさらマイナ保険証でないとメリットを享受できないとする宣伝は「誇大広告」と言わざるを得ません。

参考記事

マイナ保険証/オンライン資格確認システムのメリット論を検証する

「利用率関係なく保険証廃止」ならマイナ保険証利用推進キャンペーンは中止を

武見敬三厚労大臣は4月18日に参議院厚労委員会の審議では、「利用率と関係なく保険証を廃止する」「マイナ保険証を利用するか否かは本人の意向」だから「利用率の目標設定はない」と言い切りました。厚労省として目標も設定しないと言いながら、医療機関には「自主目標」として目安を示して目標を決めさせるやり口も問題です。目標値もないキャンペーンであるならば、217億円もの税金を投入してまで医療機関にマイナ保険証利用を患者に呼び掛けさせることは中止すべきです。

参考記事

武見敬三厚労大臣「マイナ保険証利用率関係なく12月に保険証廃止」 

厚労省も医療機関HPに保険証持参呼び掛けてますが・・・

4月10日医療保険部会資料 医療機関HPに来院時に持参いただくものとして「マイナカード又は健康保険証」としている