【高額療養費大改悪】全世代1250万人の患者負担増 現役世代では400万人が対象に

厚労省は1月23日の医療保険部会において25年8月からの高額療養費の引き上げに伴う各所得区分ごとの高額療養費の利用人数を公表した。

70歳未満の現役世代の被保険者数は9640万人のうち、400万人が年1回以上高額療養費を利用している。今回の高額療養費制度の限度額引き上げは、全ての年代、全ての所得階層で引き上げられるため、患者負担増となる人数も現役世代だけで400万人に及ぶ。

70歳以上の高齢者層では、被保険者2750万人のうち、850万人が年1回以上高額療養費を利用している。その内、年1回以上外来特例を利用者する患者は600万人だった。患者負担増となる人数も850万人と推定される。

全世代では、実に1250万人の患者が高額療養費の限度額引き上げにより負担増となる。

がん患者や家族の苦しみを知るべき

厚労省は、高額療養費を現在利用している患者へのヒアリングや実態調査は一切行っていない。保団連は、1月10日の厚労大臣会見で「現役世代の方で多く利用している。患者団体の方から声が上がっている、現役世代のビックリスクでの利用が多い。丁寧にヒアリングすべきでないか」と指摘。福岡資麿厚労大臣は「様々な疾患があり、それぞれ様々な団体があります。それぞれ患者一人ひとりにおかれた状況は皆様違うわけですので、そうした意味においては、それぞれの団体から説明を聞くというわけではなく」と述べ、患者へのヒアリングは実施しない考えを示した。

確かに高額療養費を利用する1250万人の患者すべての声を聞くことはできないかもしれない。全がん連が実施したアンケートにはわずか3日間で3600人以上のがん患者から高額療養費制度の負担増見直しを求める声が寄せられている。寄せられた意見を見るだけでも、収入の半分が高額な治療費に消えていくなど、ギリギリの生活状況下にあり、高額療養費制度を活用しながら何とか踏ん張って治療継続している方がたくさんいることがわかる。

高額療養費の限度額引き上げで治療中断に繋がりかねない患者の実態調査すら実施せず制度を改悪するのか。野党から予算案の修正を求める声が出ている。少なくとも厚労大臣自らが患者団体等のヒアリングを実施すべきではないか。

「治療をあきらめろ」と言うに等しい

厚労省は、10年前に比べ家計所得が上昇したとし引き上げの論拠にしているが、物価高騰で実質賃金が低下し続けており家計に負担余力などない。しかもがんなど重篤な疾患で治療中の患者は、家計所得が著しく減少することが民間団体の調査で明らかとなっている。高額療養費の限度額は前年所得で算定されるため、病気を患った患者に思いのほか負担を強いることになっている。

医療保険部会のとりまとめ(高額療養費見直しの方向性)では、「今回の見直しにより必要な受診が妨げられることのない」とする根拠やエビデンスは皆無だ。「高額療養費の引き上げが家計や受療行動等に与える影響については、その分析のために必要なデータを把握していくための方策等について、今後検討していく。」と負担増による影響を検証するとしているが、命にかかる疾患患者が負担増を苦に治療をあきらめることになれば元も子もない。

今でも高額な治療費支払に困難を抱えている重篤疾患の患者にさらなる負担を強いることは「治療継続をあきらめろ」と言っているに等しい。患者・家族への残酷な仕打ちとしか言いようがない。直ちに高額療養費の限度額引き上げを撤回すべきだ。