【自維社保合意骨子】高齢者医療の窓口負担増ありきの工程表策定に強く抗議します

2026年7月7日

2026年7月7日

 

自維両党が社会保障改革骨子に合意

高齢者医療の窓口負担増ありきの工程表策定に強く抗議します

 

全国保険医団体連合会

会長 竹田智雄

 

自民党と日本維新の会は7月7日、社会保障改革項目に関する具体的な骨子を発表しました。最大の焦点となった70歳以上の高齢者医療の窓口負担割合について「原則3割となっている現役世代との間で年齢によらない真に公平な応能負担を実現する観点から見直しを行う」とし、改革工程表を令和8年末までに策定すると明記しました。

日本維新の会や財務省が強く求めていた高齢者医療の「原則3割化」の記載こそ見送られましたが、70歳以上の高齢者に適用される高額療養費・外来特例のあり方や負担割合の区切りとなる所得水準の見直し、対象年齢の引き上げなど窓口負担の抜本見直しを求めており、「令和8年末までに一定の結論を得る」と明記しています。

「低所得者等の必要な受診が確保されるよう適切に配慮することを前提」「必要な受診が確保されるよう適切な配慮措置を講じる」としていますが、極めて曖昧です。現役世代と高齢者の有病率、受診状況、支払い能力の違いを無視した見直しが実施されると、受診抑制による重症化、医療・介護費用の増加、看護・介護離職の増加など患者・家族にしわ寄せとなることは明らかです。自維両党が密室協議で負担増の工程表策定を求めることに強く抗議します。

 

現役並所得の高齢者はすでに「3割」

自維両党は、「現役世代との公平性」と「年齢に関係なく応能負担」という論理で窓口負担割合を現役世代と同じ3割負担化を求めています。しかし、現状でも現役世代と同等の所得がある高齢者は「現役並み所得」と区分され、窓口負担も保険料も同一条件です。

高齢者の窓口負担割合は70歳以上で原則2割、75歳以上で原則1割と配慮する理由は、複数疾患を抱える高齢者は現役世代に比べて医療需要が高く患者負担も多くなること、年金収入のみの高齢者世帯が多く負担能力に限界があることですが、その背景要因は変わっていません。

 

低い高齢者の年金収入―100~150万円が最多 

高齢者の主な収入は年金ですが、近年の物価高騰で生活苦はむしろ広がっています。令和8年度高齢社会白書によると、高齢者の収入は「年金のみ」で非課税の方が多く、高齢者の平均所得は314万円、その他の世帯の半分に過ぎません。また、高齢者世帯の所得階層分布は100~150万円が最多です。年金収入が中心で、世帯全員が住民税非課税の70~74歳(窓口負担2割)は260万人、75歳以上(窓口負担1割)は811万人います。

また、高齢者の就業率は増加していますが、「65歳以上の約4割が収入に伴う仕事をしたい(令和8版高齢社会白書)」と年金収入だけで暮らしていけない状況にあります。

政府は、高齢者の就業率を向上させ、労働力不足を補い、税・社会保険料収入を確保する考えですが、そうであれば有病率が高い高齢者の雇用促進とセットで医療アクセスを確保することがむしろ重要です。

 

負担増で破滅的支出に 受診抑制・重症化で医療費増に

窓口負担が1~2割の高齢者を3割負担、外来特例を廃止した場合、70歳以上の高齢者2580万人が負担増となります。70~74歳の高齢者1人当たりの患者負担(年額)は7万2775円ですが、2割を3割にした場合、10万9162円に増加します。75歳以上の高齢者1人当たりの患者負担(年額)は7万8998円ですが、1割を3割にした場合、23万6994円に膨らみます。

70~74歳の2割化(平成26年4月)、75歳以上一定以上所得者の2割化(令和4年10月)などこの間の患者負担増で2022年までの14年間で1人当たりの受診日数(年間)は入院外と入院のいずれも減少しています(70~74歳は-13.1日、75~79歳は-14.5日、80~84歳は-13.4日、85~89歳は-11.8日)。

世界保健機関(WHO)では、収入から税金や保険料、食費などの生活費を除いた「支払い能力」に対し、医療費の支出が40%を超える状況を「破滅的医療支出」と呼称しています。低年金の高齢者の医療費を原則3割負担とすると「破滅的支出」に該当します。

「原則3割化」は医療を必要とする高齢者の受診抑制による重症化、健康悪化を招きます。高齢者が負担増によって受診を控えると、重症化のリスクが高まり、医療費増につながります。特に糖尿病は血糖管理のための1カ月1回の通院が3カ月に1回になると、血糖管理が疎かになり、網膜症・腎症・神経障害など合併症や心筋梗塞・脳卒中など多様な障害が起こります。透析や入院などの医療費が増加します。

 

介護離職、将来不安―現役も負担増の現実 

自維両党は「現役世代の保険料軽減」と世代間分断を煽り、高齢者医療の切り捨てを迫っています。高齢社会白書では2025年の認知症の高齢者(65歳以上)は471万人、軽度認知障害は564万人と推計されており、家族の介護や看護を理由とした離職者は1年で約10.6万人。うち女性が約8万人で75%を占めています。高齢者負担増は現役世代にも重荷になります。

医療費の患者負担増は、いずれ高齢期を迎える現役世代の老後の不安にもつながります。自維両党は、民間保険の利活用などを進めていますが、民間保険への保険料支出増による国民負担増でしかありません。経常利益や内部留保を溜め込む大企業にこそ税・社会保険料で応分の負担を求めること、物価高騰を上回る賃上げを実現していくことこそが必要です。