【談話】2024年度介護報酬改定に対する談話

全国保険医団体連合会では、介護給付費分科会で2024年度介護報酬改定の答申が行われたことを踏まえ、下記の談話をマスコミ各社に提出しました。

2023年2月5日
全国保険医団体連合会
地域医療対策部
医科担当副会長 中島 幸裕
歯科担当副会長 森元 主税

【談話】国庫負担を拡大し、介護報酬の大幅引き上げと利用者負担軽減を強く求める

1.訪問介護の基本サービス費引き下げは言語道断

 今次改定では介護職員の処遇改善が最大のテーマであったが、介護報酬全体の引き上げ幅は1.59%しか確保されず、訪問介護等の基本報酬は引き下げられた。厚労省は「訪問介護の収益率は7.7%の黒字だ。介護職員処遇改善加算を評価した。トータルで見てほしい」と述べたが、小規模事業所は調査に応じる余裕すらなく大規模事業所の経営がそのまま反映したとの指摘がされている。基本報酬を引き下げれば事業の維持・管理に回せる収入は減少し、休廃止する小規模事業所が増加する。そうなれば一番困るのは利用者であり、介護を受けられなければ健康状態も悪化する。小規模事業所への処遇改善の届出支援や財政措置を行うとともに、次回改定を待たず基本報酬を引き上げるべきである。

2.介護への国庫負担拡充は、国の責務

 2000年の介護保険制度発足以降、前回改定までに7回の介護報酬改定が行われたが、居住費・食費の自己負担化を含めた影響率は7回合計でマイナス1.53%である。介護報酬を引き上げてこなかったことが、介護職員不足・介護崩壊を招いてきた元凶である。

 しかも、2022(令和4年)の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によれば介護職員の賞与込み給与は全産業平均を月額68,000円下回っている。また前回報酬改定前の2020年を100とした消費者物価指数は、2023年10月時点で107.1まで上昇している。職員の処遇改善、物価高騰への対応、感染対策をはじめとした利用者へのサービス向上のためには、10%以上の大幅な介護報酬引き上げが不可欠である。

 介護リスクは要介護者や家族だけでなく、働き手を失う企業や社会全体にとっても大きな痛手である。

 さらに介護を含む社会保障分野の「総波及効果」は公共事業よりも高く、主要産業より「雇用誘発効果」は高い。また、介護保険は保険財源に対する国庫負担や企業負担が少ないため、報酬引き上げが保険料に与える影響が大きい。

 したがって、国庫負担を拡充して介護報酬の大幅引き上げを行うべきである。

 財源はある。2022年度の金融と保険を除いた国内企業の内部留保は前年度より7.4%増の554兆7777億円で11年連続過去最高となった。資本金10億円以上の大企業に絞った場合、2022年度の内部留保は511兆円を超え、前年度末に比べて27.1兆円も増加している。

 国の責務は、要支援・要介護状態となってもすべての国民が健康で文化的な生活を営むことができる環境を整備することである。介護崩壊を食い止めるためにも、国庫負担を拡大して介護報酬の大幅引き上げと利用者負担軽減を行うよう、改めて求めるものである。

3.必要とするすべての方が医療と介護を受けられる制度に

 今次介護報酬改定では、リハ、口腔、栄養の一体的取り組みの推進や高齢者施設での感染者の療養、医療的ケアを要する者の特定施設での積極的な受け入れ促進に向けた改定が行われる。

 必要なことは医療と介護が必要な方に、しっかりとそれぞれの専門的なサービスが提供できることであるが、診療報酬では急性期一般入院基本料1の重症度、医療・看護必要度からB項目を外すなど高齢の救急患者を受け入れにくくなる改定が実施され、医科・歯科診療報酬もネットでマイナス0.12%となっている。介護報酬とともに、高齢者の救急対応の確保を含めた医科・歯科診療報酬の大幅引き上げが不可欠である。

4.介護予防訪問リハビリ、大規模型(Ⅰ)の通所リハビリ引き下げを撤回し、引き上げを

 介護予防訪問リハビリが9単位引き下げられる。また大規模型通所リハビリは、(Ⅰ)(Ⅱ)の区分が廃止されて大規模型に一本化されるが、(Ⅰ)は最大28単位もの引き下げとなる。医療との連携を強めリハビリの充実を図るためにも基本報酬を引き下げるべきではなく、報酬引き上げを行うべきである。

5.介護療養型医療施設の廃止の延期を

 今年3月末で介護療養型医療施設が廃止されるが、新型コロナ感染症への対応などによって、移行に向けた十分な準備ができていない医療機関が少なくない。介護療養型医療施設は、地域にとって必要不可欠な存在であり、廃止時期について再度十分な期間を設けるとともに、全ての対象医療機関がその機能を発揮できるよう、移行について丁寧な説明と支援を行うべきである。

6.改定内容の周知徹底のため、次回改定は6月実施に

 2024年の介護報酬改定は、居宅療養管理指導・訪問看護・訪問リハ・通所リハと介護職員処遇改善については6月実施。その他のサービスは4月実施とされた。

 そもそも介護はケアプランを作成した上で利用者の同意を得てサービスを提供することが原則である。3月に告示・通知を出すのであれば6月実施とすべきで、6年後の同時改定のためにも3年後の改定は6月実施とすべきである。

7.保険料と利用料の負担拡大を中止すべき

 老健(その他型及び療養型)と介護医療院(Ⅱ型)の多床室の室料が2025年8月より保険給付から外され、月額8,000円もの利用者負担増となる。介護保険料も引き上げられ、高齢者はこれだけの負担増に耐えうる状況にはないにもかかわらず、更なる利用者負担拡大も狙われている。国庫負担を拡大し、保険料と利用料の負担拡大を中止すべきである。

以上