
1年で3パーセントを超える急激な物価高騰。その中で求められる人件費上昇などの影響で、医療機関の経営危機が全国に広がっています。
地域の患者さんに安定して医療を提供するために、医療機関を支える緊急対応が必要です。
診療所の4割が赤字、「近い将来、廃業」13.8%
日本医師会が9月17日に公表した緊急調査によると、医療法人の24年度の医業利益の赤字割合は、23年度の31.3%から45.2%に増え、経常利益では24.6%から39.2%に増加しました。経営課題(複数回答)は、「物価高騰・人件費上昇」(76.0%)、「患者単価の減少」(60.6%)、「患者減少・受診率低下」(51.0%)が上位に挙がっています。また、41.3%が「施設設備の老朽化」を挙げたほか、13.8%が「近い将来、廃業」と回答しました。
■日本医師会「令和7年 診療所の緊急経営調査」(2025年9月17日)
国立病院の7割が赤字
全国44の国立大学付属病院院長でつくる国立大学病院長会議は7月9日、記者会見を開き、24年度決算で7割の29病院が赤字になったと報告しました。44病院の経常損益は過去最大となる285億円の赤字です。
自治体病院の8割が赤字
全国自治体病院協議会が8月6日に公表した「会員病院の令和6年度決算状況調査」の結果によると、会員病院の86%が経常赤字、95%が医業赤字との結果に。
■全国自治体病院協議会「会員病院の令和6年度決算状況調査の結果」(2025年8月6日)
民間含め病院の6割が赤字
病院6団体(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、日本慢性期医療協会、全国自治体病院協議会)の調査によると、病床利用率は上昇傾向にあるにもかかわらず、69%が医業利益で赤字、61%が経常利益で赤字に陥っています。
■病院6団体「緊急調査・2024年度診療報酬改定後の病院経営状況」
医療従事者の賃上げは平均の半分
医療従事者の賃上げは2024年度、25年度の2年間でわずか3.4%だったことが分かりました。全産業平均は7.3%(24年度3.56%、25年度3.70%)で、医療従事者はこの半分にも満たない水準です。
■中医協第9回入院・外来医療等の調査評価分科会資料(2025年8月21日)
4割の施設が職員採用の募集定員満たせず
病院や診療所などで働く人々でつくる日本医労連が6月5日に公表した「看護職員の入退職に関する実態調査」によると、4月採用は4割の施設で募集定員を満たせませんでした。
退職者が採用者数を上回った施設は約6割に上ります。24年末の一時金が大幅に削減された施設のみを抽出すると、看護職員減(退職者数が採用者数を上回った)となった施設が18施設64.3%で、全体より6ポイント高くなりました。年末一時金の削減が人材流出の要因になっていることがうかがえます。
看護職員不足による医療提供体制への影響は、44.8%の施設が「患者サービスの低下」と回答しています。
■日本医労連「2025年看護職員の入退職に関する実態調査」(2025年6月5日)