

生活保護基準引き下げ処分の取り消しを求める「いのちのとりで裁判」。2013年から平均6・5%、最大10%と史上最大の生活保護基準引き下げに対して、全国29都道府県、千人を超える原告が違憲訴訟を起こした。昨年、最高裁は引き下げを違法と判断し、処分を取り消した。一方、国は補償額を半分程度に値切るなど、真摯な対応がなされていない。原告にならなかった当事者も含め、新たに行政不服審査請求の運動が始まった。いのちのとりで裁判全国アクションの田川英信さんに話を聞いた。
「いのちのとりで裁判」とは
2013年からの生活保護基準引き下げ処分の取り消しを求めている訴訟群のことです。全国29地域、31の訴訟(東京が3つ)で闘われてきました。
12年末の総選挙で、当時、野党だった自民党が「保護費を1割引き下げる」と公約し、選挙で勝って与党となり、第2次安倍政権が誕生しました。この自民党の公約に沿う形で、厚労大臣が最大1割、平均6・5%、生活扶助=生活費を削減したのです。
なぜ基準が引き下げられたのか
当時、厚労大臣は基準引き下げの根拠として、①一般世帯は2・35%の物価下落だが、生活保護世帯は4・78%も下がったため、買えるものが増えた。②低所得層の消費水準との比較で、保護基準が高すぎないかという「ゆがみ」を調整した―としています。
しかし、①一般世帯の倍も物価下落したとする統計操作は「物価偽装」と呼ばれるものですし、なにより保護基準を審議した生活保護基準部会には諮らないままの強行でした。また、②「ゆがみ」調整についても、生活保護基準部会や国会にも内密にその調整幅を半分にした(引き上げすべき額も半分に…)ことが問題とされました。
最高裁の判断は
昨年6月27日、大阪訴訟と愛知訴訟について、最高裁判所は原告勝訴の判決を出しました。違憲としたわけではなく、生活保護法違反として保護基準を基にした引き下げ処分を取り消しました。「物価が4・78%も下がった」ことをそのまま基準に反映させたことを違法と認めたものです。
最高裁が生活保護基準、引き下げ処分を違法とする判決を出したのは初めてのことです。
厚労省が示した補償内容は
最高裁の判決後、厚労省は原告に謝罪することもなく、原告や弁護団を抜きにして、判決への対応を論議する「専門委員会」に諮問し、物価下落ではなく、「消費水準」が下がったことを理由に、13年に遡って2・49%の引き下げを強行しました。
このことにより、本来あるべき補償額を半分程度に値切ったことになります。そして、各地の裁判を今も続け、争っています。
新たに審査請求運動を
なにより問題なのは、最高裁で違法と判示されるようなことをしたのに、真摯な反省もなく、再発防止のための検証にも取り組まないことです。
半分に値切られたとはいえ、国費で2千億円もの補償が行われています。原告だけでなく、原告にならなかった当事者も含めて、新たに行政不服審査請求運動を始めました。侵害された人間の尊厳を取り戻す闘いは、まだまだ続きます。


