【シリーズ・高額療養費改悪は中止を②】生活困窮進む 医療費高騰は国の責任も

高額療養費は全体の6%

厚労省は、高額療養費制度を見直す背景に関わって、「高齢化の進展」や「医療の高度化」、「高額薬剤の開発・普及」などによって高額療養費の総額(負担限度額を超えた支給部分)が年々増加し、「医療保険財政に大きな影響を与えている」ことをあげています。
現在、高額療養費の総額(2021年)は年2.85兆円ですが、これは総医療費(45兆円)のうち約6.3%相当にすぎません。総医療費の約8割は通常の公的保険診療給付(現役世代と高齢者)を占め、残りの約12%を患者負担で賄っています。高額療養費が医療保険財政を逼迫させているかのような言い方は不正確です。

薬剤費高騰には国の責任も

医療費の伸びについては注意が必要です。近年、医療費は、毎年約3%ずつ伸びています(※2017~22年度の平均。コロナ感染拡大の影響が大きい21年度は除く)。医療費伸びの平均2.8%弱のうち、高齢化による影響は平均1.06%に対して、医療の高度化など技術進歩に負うものが平均2.7%とはるかに大きくなっています。一般に抱かれているイメージとは異なり、高齢化による伸びは大きくありません(下図)

 

医療費の伸びの多くは「高額な薬剤」に負うものです。遺伝子治療・再生医療はじめ医療技術の進展は目覚ましいものがあり、患者にとっては朗報ですが、新薬に「高い薬価」をつけることは別問題です。2022年度での新薬への高い評価に続き、2024年度薬価制度改革では、日米欧製薬業界からも歓迎されるほどの新薬の高薬価の算定を可能とする大盤振る舞いを実施しています。国自らが「高い薬価」を政策的に助長しておいて、その負担のつけを患者にしわ寄せすることは問題です。新薬を値付けするルールを改善して、高薬価算定構造こそ改めるべきです。

実質賃金は低下している

同様に、厚労省は、見直しに関わって、大幅な制度の見直しを行った約10年前(2017円)と比べ「賃上げの実現」で世帯収入が増えたことをあげています。
しかし、実質賃金は増えるどころか、2012年の自公政権以降、年額33万6千円も減ったのが実態です。他方、異常な物価高騰で生活は厳しさを増しています。「賃上げ」は理由になりません。