厚労省は、高額療養費制度を見直して患者負担増を求める構えですが、これは現在の制度の基本設計、利用・運用の実態を無視したものです。
通常入院では使えない制度に変容
2017(平成27)年1月以降、相次ぐ負担引き上げを通じて、現行の高額療養費制度は、治療・療養の継続や生活・生業を守る「セーフティネットとしての役割」が大幅に低下しています(下表)。
年収370万円以上での3階層への区分化と各々での負担限度額の大幅引き上げによって、これらの所得階層では、外来医療ではもとより、短期入院(5日以内)での手術や検査等の入院(1週間前後)では高額療養費制度を利用することはなくなっています(※現在、急性期病床では平均入院期間は2週間未満)。
中高所得者(年収770万円以上)にとっては、例えば、バイオ新薬など「高額な薬剤」で3か月単位での処方(箋)を受けて、窓口での支払いが12~13万円に及んでも支給の対象となりません(※月16.7万円までは患者負担)。がん手術や抗がん剤治療で2週間超の入院でもない限り、高額療養費制度は使わない(使えない)制度になりつつあります。
年収100万円以下でも月3.5万円まで負担
生活困難が深刻化する中、負担限度額の引き下げ、特に低所得者への配慮は急務です。
現在、低所得者(住民税課税で年収370万円未満の70歳未満)においては、月6万円近くまで窓口負担を強いられます。
とりわけ、年収100万円以下(住民税非課税の70歳未満)において、負担限度額月約3万5千円は重すぎます。住民税非課税の人(70歳未満)は国民健康保険への加入者が多くを占めています。被用者保険(健康保険組合、協会けんぽ)とは異なり企業主の保険料負担がないため、不公平に重い保険料を強いられた上、高い窓口負担が重くのしかかっています。