重い病気ほど負担が重くなる
今の高額療養費制度では、重い病気ほど負担が重くなる形で限度額が決定されています。
年収370万円以上の人の場合、負担限度額の算出に当たっては、いわゆる、8万円、16.7万円、25.3万円といった基軸となる限度額とは別に、(総医療費-基軸となる限度額)の1%相当分の負担が上乗せされます。昨今、この1%条項が、抗がん剤などでの「高額薬剤」の相次ぐ登場によって重くのしかかっています。働き盛りの勤労者(70歳未満、年収370万~770万円)が4,000万円(薬価)の抗がん剤を使用した場合、1%相当の39万円強(薬剤分のみ)が追加の上乗せとなります。これに8万円が追加されることで、計50万円近い支払いとなります。‟公的保険診療”で認められた薬剤を使用している以上、1%条項の適用除外や負担限度額の追加引き下げなど改めるべきです。
月途中での入院は損!?
負担限度額が治療の総額ではなく「月ごと」に設定されているため、月をまたぐと限度額が適用されない問題もあります。先の勤労者(同上)の事例では、例えば6月中旬に入院した月の支払いが7.5万円、退院した7月中旬の支払いが7.5万円となった場合、患者は計15万円を支払います。入院開始日をずらして7月初旬にして7月末日に退院した場合、15万円の医療費負担に負担限度額が適用されて約8万円の支払いですみます。入院費用が要因となって、入院開始日が後ろ倒しとなれば、治療上、本末転倒です。その疾病の治療が終了するところまでで合算できるようにすることや、治療が長期にわたる場合(例えば、抗がん剤治療を月単位で繰り返す血液がんなど)は、一定期間で区切りをつけて合算するなど改善が求められます。以前とは異なり、病院ではレセプト(月ごとの診療報酬計算表)は電子化されており、実務処理上の困難もありません。早急に改善すべきです。
入院した場合、入院食事代(1日・3食)として1,500円の患者負担(住民税課税の場合)がかかりますが、高額療養費の支給対象外とされています。入院食は栄養管理や摂食上の工夫などがされ治療の一環です。さらに、入院時は賃金が不安定になる一方、雑費(病衣、タオル、日用品など)も様々かかります。家計の保障に向けて、入院食についても高額療養費の支給対象とすべきです。
安全・安心な「セーフティーネット」に向けて、負担限度額の引き下げはじめ高額療養費制度の抜本的な改善こそが求められます。