【シリーズ・高額療養費改悪は中止を⑤】年収260万~370万円は月額4割の大幅引き上げ

高額療養費制度では、高齢者(70歳以上)と現役世代(70歳未満)の仕組みは別建てで設計されています。70歳以上の場合、中低所得者の人は、「外来特例」はじめ負担限度額が、現役世代よりも相対的に軽減されています(※現役世代との違いは、下図の点線囲み部分。うち青い囲みが「外来特例」)。例えば、外来医療について、負担限度額(=外来特例)が、年収370万円未満では月1万8千円(年間で14万4千円)、住民税非課税の場合では月8,000円とされています。

 

厚労省は、年齢・世代の違いに関わりなく、「負担能力に応じた負担」を求めると提案してきました。12月25日に厚労省が公表した政府決定(財務大臣との「大臣折衝事項」)では、外来特例も含めて負担限度額を引き上げるとしました。70歳以上の年収370万円未満での見直しについて見てみます。

年収200万~370万円で月1.2万円~2.2万円引き上げ

現在、年収段階は、年収370万円未満、住民税非課税、住民税非課税(一定所得以下)に3区分されています。全ての年収段階を対象に負担限度額を引き上げます(下表)

月の負担限度額では、2025年8月以降、3%~5%の幅で引き上げます。次いで、26年8月以降、年収370万未満の層を200万円未満、200万円~260万円、260万~370万円に細分化した上で、年収が高い層から引き上げ幅を高くする形で見直します。年収260万~370万円の場合、最終的には月57,600円から79,200円へと40%近い引き上げです。年収200万~260万円の人も月57,600円から69,900円へと20%を超える引上げ幅です。これらは、概ね現役世代での見直しに合わせる形です。

外来特例は負担限度額1.5倍(月1万円)引き上げ。75歳以上に追い打ち

外来特例については、2026年8月より引き上げます。とりわけ、年収200万円~260万円、年収260万~年収370万円の人は月18,000円から月28,000円へと50%を超える引き上げです。同じく、年金ではおよそ年155万円以下にあたる「住民税非課税」の人は月8,000円から月13,000円へと60%を超える引き上げです。年間の負担限度額についても、年収200万円~260万円、年収260万~年収370万円の人は、144,000円から224,000円へと56%もの引き上げ幅です。

年金が実質削減され、物価高騰が続く中、ギリギリの生活を強いられている高齢者に大幅な負担増を求めます。とりわけ、75歳以上で年収200万円以上の人は、2022年10月からの窓口負担1割から2割への引き上げに続き、ダブル、トリプルパンチです。70歳以上で年収370万円未満の人は約1,480万人、「住民税非課税」に当たる人は約640万人に及びます。膨大な数の高齢者に大きな痛みを強いる見直しです。