【シリーズ・高額療養費改悪は中止を⑥】高齢者の外来特例は当然の政策的配慮

厚労省は、年齢・世代の違いに関わりなく、「負担能力に応じた負担」を求めるとして、高齢者の外来受診に際して医療費負担を別途軽減している「外来特例」などを目の敵にしています。政府の決定では、外来特例などを改悪する方針を示しました(【シリーズ5】を参照)。

早期発見・早期治療の要

現役世代には設定されていない、外来特例(や住民税非課税の人での負担限度額の軽減措置)は、高齢になるほど病気にかかりやすく受診する機会が増える一方、所得(ほぼ年金。勤労所得は限定)は現役時代に比べて大幅に低下することに考慮したものです。現在、後期高齢者のうち9割弱が外来で何らかの慢性疾患を治療し、およそ3人に2人が2つ以上の慢性疾患を治療するなど、高齢な患者ほど多くの受診が必要です。とりわけ、疾病が重篤化しやすく、状態回復も遅くなる高齢者にとっては、早期発見と早期治療が重要です。

高齢者は重い負担を強いられている

原則、窓口負担1割の75歳以上の高齢者(及び70~74歳は原則2割負担)について負担が軽いかのような議論がありますが、すでに高齢者は重い窓口負担を負わされています。年収に対する窓口負担が占める割合では、現役世代(30~50代)の2~6倍近い重い負担を強いられています(下図)。また、年金が実質削減される中、2022年10月より75歳以上の高齢者に窓口負担2割が導入されており、負担割合はさらに上昇しています。外来特例はじめ負担限度額の引き上げは、こうした不公平な状況をさらに広げて、高齢者を医療からますます遠ざけることになります。

医療費が高くなる一方、年収は低くなる高齢者にとって、「外来特例」など負担軽減を図る別建ての仕組みは当然の政策的配慮です。年齢・世代の違いに関わりなく「負担能力に応じた負担」を求めるとする厚労省の主張は問題の多い議論と言わざるを得ません。