政府は、高齢者(年収370万円未満)に適用されている「外来特例」(外来受診において、負担限度額を月1.8万円・年14.4万円など別途に軽減する措置)について、月の負担限度額を最大1万円(1.8万円→2.8万円)引き上げるとしています。同様に、年間の負担限度額についても、最大8万円(14.4万円→22.4万円)引き上げるとしています。
改悪でがん治療中断も
高齢者において外来特例が政策的に求められる点については、【シリーズ6】にて触れました。ここでは、現在の外来特例の問題点(改善すべき点)について触れます。
外来特例については、負担限度額の水準が高く、患者の多くが負担軽減の対象にならないことが大きな問題です。厚労省の審議会資料によれば、外来の月負担限度額1.8万円に該当する患者の割合は、70~74歳(住民税課税で年収370万円未満)で17.9%、75歳以上の2割負担者(年収200万円~383万円)で27.8%、75歳以上の1割負担者(住民税課税で年収200万円未満)に至っては8.2%に過ぎません(下図)。
背景には、負担限度額を超えるケースが、がん治療で受診(1月間)するような場合などに限定されてくる事情があります。政府が示す外来特例の見直しによって、がん治療での受診ケースの場合、窓口負担は2割負担者で月1.8万円から2.8万円へと大幅な負担増を強いられることになります(※下図の赤い囲み)。がん治療の中断を招き、治療が手遅れになる人も生み出しかねません。早期発見・早期治療の保障に向けて、外来特例の負担限度額の引き下げこそが必要です。
年収370万円以上にも外来特例を
外来特例が適用される年収範囲が狭いことも問題です。現在、年収370万円以上の高齢者(概ね3割負担者)には、外来特例はありません(※この間、改悪がされ続け、2018年8月より、外来特例・月負担限度額5.8万円が完全に廃止される)。がん治療で受診(1月間)する場合、年収370万円超の人はそのまま3割負担が適用され、月5万円もの負担を強いられています(上図の青い囲み)。
抑制された負担限度額に基づく「外来特例」は、きめ細かい外来受診を保障する結果、不要な入院や入院の遅れを防ぎます。年収370万円以上の高齢者にも外来特例を復活して、月額負担限度額で1.8万円前後の水準を認めるべきです。
高齢者の疾患・疾病特性などから見て、「外来特例」はじめ負担限度額の引き上げは到底認められません。