【シリーズ・高額療養費改悪は中止を⑨】微々たる保険料軽減、国の責任放棄

保険料軽減は月46円~202円

政府は、「現役世代をはじめとする被保険者の保険料負担の軽減を図る」として、負担限度額引き上げを正当化していますが、そもそも、保険料を軽減することと重篤な疾患の治療・療養を要する患者に負担増を求めることは何の脈絡・関係もありません。

厚労省によれば、今回の見直しによって、保険料は年3700億円が軽減されるとしています(下図)。被保険者1人あたりの保険料軽減では年1,100円~5,000円としており、月額では92円~417円と見込まれます。しかも、勤労者の場合、保険料は企業主負担と折半するため、実際の保険料軽減は月46円~208円と微々たるものです。これにしても、医療技術の進歩などで医療費は年々増えますので、実額で減るわけではなく、保険料が上昇する額をわずかに抑制するものにすぎません。

国民の2人に1人はがんにかかる時代です。思いがけず大病を患ったり、事故に遭うことはどの世代にも起こりえます。その際の自己負担が上がることは国民の不安を増大させ、少子化対策にも逆行します。

微々たる保険料軽減と引き替えに、いざという時に大幅な負担増を強いて安全・安心な治療を妨げるのが、今回の見直しの中身にほかなりません。

国の財政責任の後退

同様に、厚労省によれば、今回の見直しによって、国などの財源負担(満年度ベース)は1,600億円(国:1,100億円、地方:500億円)が削減されると見込まれています。実態は、‟保険料負担の軽減“をダシに使って、国などの財政責任を後退させるものです。

医療の進歩などで今後も医療費は増加します。保険料負担軽減のためには、患者負担の引き上げではなく、医療費への国の負担率を引き上げることこそ必要です。合わせて、所得が低い人ほど重い負担となっている社会保険料負担のあり方を抜本的に改善することが求められます。