保険証廃止、オンライン資格確認義務化に関する調査(10月14月-11月20日)

保険証廃止、オンライン資格確認義務化に関する調査(10月14月-11月20日)

医師・歯科医師 8700 人の声
保険証廃止、オンライン資格確認義務化に関する調査
保険証廃止に反対が 65%、4 割でトラブル発生、9 割がシステムの必要性ない

全国保険医団体連合会

政府は、医療機関等に 2023 年 3 月末までのオンライン資格確認の原則義務化を求めるだけではなく、2024 年秋に保険証廃止を目指す方針を表明し、医療現場や患者から不安と懸念、怒りが広がっています。全国保険医団体連合会は、オンライン資格確認義務化、保険証廃止に対する医療現場の実態・意識調査を実施しています。これまで寄せられた回答速報値を報告します。
調査期間:2022 年 10 月 14 月-11 月 16 日 ※調査は 11 月 20 日まで継続
調査方法:保団連メールマガジン登録会員、各都道府県の保険医協会・保険医会会員
がウェブフォーム又はファックスで回答。
回答数:8707 件(医科診療所 5186 件、歯科診療所 2668 件、病院 449 件、N/A390 件)

結果概要:

Ⅰ.政府の保険証廃止方針について

保険証廃止に反対が 65%、
〇政府の 24 年秋保険証廃止について 65%が反対、どちらでもないが 23%、賛成がわずか8%となった。
〇保険証廃止による医療現場や患者の影響について、82%が「マイナンバーカード利用に不慣れな患者への窓口応対の増加」、75%が「マイナンバーカードの携帯・持参が困難な患者(単身高齢者等)への対応」、74%が「システム不具合時に診療継続が困難となる」と回答した。
〇医師・歯科医師から 3079 件の自由意見が寄せられており、その多くが保険証廃止による医療現場や患者に混乱と困難をもたらすとの懸念の声である。

Ⅱ.オンライン資格確認義務化について

〇オンライン資格確認システムの「運用開始」が 24%、「準備中」が 55%、「導入しない・できない」が 15%となった。

1.システムの運用を開始した医療機関の実態

運用開始の4割で不具合・トラブル
「有効な保険証が無効となるが6割」、「カードリーダーの不具合が4割」

(結果概要)
システムの運用を開始した医療機関の実態は、83%が「利用する患者数がほとんどいない」と回答。運用開始の 41%でトラブル・不具合が発生。トラブル・不具合の具体的な内容は、「有効な保険証が無効と表示された」が 62%、「カードリーダーの不具合(41%)」となった。

(解説)
※トラブル・不具合が生じた場合、現状では、保険証で資格確認し、保険診療を実施しています。しかし、保険証が廃止され、被保険者情報が券面に記載されないマイナ保険証に一本化されれば、トラブル・不具合を防ぐことは困難となり、事実上、保険診療が実施できなくなります。
※支払基金が医療機関に交付しているパナソニックや富士通のカードリーダーが Windows Update 更新により機動しない事故が発生しています。43,000 台以上が医療機関等に配置(交付含め)しています。

2.導入を準備中の医療機関の実態
必要性ないが義務化で導入が 9 割
システム費用は半数超で補助金を超過
23 年3月末期限間に合うか不明が 48%

厚労省は規則を改正し、2023 年 3 月末までにシステムの運用開始を義務付けています。従わないと保険医の取り消しもあり得る措置です。
(結果概要)
〇システム準備中の医療機関に、導入する理由を尋ねたが、91%が「システムの必要性を感じてないが療養担当規則で義務化されたから」と回答した。また、23 年 3 月末期限に導入できるかとの問いに対して、導入できるか不明が 48%となった。
〇システム費用について、45%が「補助金の範囲内」、54%が「補助金を上回った」と回答。半数を超える医療機関でシステム導入経費が補助金額を上回り持ち出している。
(解説)
※医療現場で必要性が不確かなシステムを、厚労省は義務化した。半数超が補助金を超過する支出を求められており、いやいや導入させられているのが実態です。

3.導入しない・できない医療機関の実態

情報漏洩、セキュリティ対策が不安 63%
レセコン、電子カルテの改修で多額の費用が発生する 61%
対応できるスタッフがいない、少ない 50%
高齢で数年後に閉院 45%

(結果概要)
〇導入しない・できないと回答した医療機関にその理由を尋ねたところ、「情報漏洩、セキュリティ対策が不安」が 63%、「レセコン、電子カルテの改修で多額の費用が発生する」が61%、「対応できるスタッフがいない、少ない」が 50%、「高齢で数年後に閉院予定」が 45%となった。
(解説)
※本会を構成する保険医協会の複数の調査でも、自院が義務化された場合、高齢世代を中心に医師・歯科医師の1割が閉院・廃院を検討しています。システム導入の義務化で地域医療が損なわれることはあってはなりません。医療機関のカルテを人質に取ったランサムウェア被害が相次いでいます。セキュリティ対策への不安から導入しないと回答する医療機関も多くいます。特に歯科医療機関などオンライン化していない医療機関の負担感は比較的高くなっています。

Ⅲ.保団連の要望

保団連は、オンライン資格確認義務化撤回と診療継続に向け実効性ある措置として以下を求めています。
〇2024 年秋の保険証廃止方針は撤回すること
〇2023 年4月よりのオンライン資格確認導入の原則義務化は撤回すること
〇全ての医療機関を対象に経過措置を設けること
〇少なくとも 2023 年4月以降も全ての医療機関が医療提供を継続できるよう大幅な経過措置・幅広の除外措置を設けるなど抜本的に見直すこと。
〇少なくとも運用トラブル・不具合が解消されるまで2023年4月実施の義務化は延期すること
〇実態調査、公聴会、ヒアリング、パブコメを開催すること