第108回(2025.7.15) 医師の働き方改革と専門医研修制度〔大阪協会・原田佳明〕

2026年6月3日

第108回(2025.7.15)

医師の働き方改革と専門医研修制度

 

地域医療崩壊5つの問題点

6月開催の保団連勤務医交流会記念講演で、群星(むりぶし)沖縄臨床研修センター長徳田安春先生が、本年度から実施の「医師の働き方改革」について、年1860時間まで時間外労働の容認、 宿日直許可乱発、自己研鑽の拡大解釈、業務時間の操作、地域医療崩壊の5つの問題点を指摘した。

1月の大阪協会勤務医部講演会でも、講師の川人博弁護士は、当直医の労働時間を実際の診察時間ではなく、1診察当たり数分に勘定する操作が行われている実態を指摘した。

初期研修の存在理由は消失

交流会後半の意見交換で、医師のキャリア形成が話題となった。2004年から2年間の初期臨床研修が義務化されたが、専門医資格取得まで時間がかかると問題視されてきた。10年の米国外国人医師卒後教育委員会(ECFMG)の国際的認証を受けていない医学部の卒業生は、米国での医師資格が得られないとの宣言を受け、17年から日本でも医学教育の国際化が行われ、初期臨床研修の内容は卒前に実施され、初期研修の存在理由は消失している。

卒後研修の整理統合を

米国では、医師免許取得後の研修は、日本の「後期研修制度」に近い形で、卒後すぐに特定の専門分野の研修に入ることが一般的とされる。

日本では専門医研修に公費は支出されず、病院職員として給与を得るが、米国では、医師の育成を社会全体で支えるという考え方に基づき、レジデンシー研修に公的資金が投入されている。

短期的な経済目標に偏重

日本の病院の約7割が赤字に陥っている。「医師の働き方改革」における実態と乖離した労働時間管理、社会経済的に脆弱な専門医研修制度、受診控えやコスト高騰、不十分な診療報酬改定、消費税の「損税」問題という多層的な構造的課題に直面している。これらの問題は相互に連関し、財政健全化や社会保険料負担軽減といった短期的な経済目標に偏重した医療政策は、医療の公共性や持続可能性を損ない、地域医療の崩壊を招く。

7月20日投開票の参院選挙では、どの政党が医療の未来と国民の生活、日本社会の健全な発展を真に構想しているのかを見極め、投票行動につなげることが求められる。

原田佳明
(はらだ・よしあき)

1982年広島大学医学部卒業、93年関西医科大学小児科学教室入局、2007年京都大学大学院医療経済学博士課程修了。現在、協仁会小松病院小児科、日本小児科学会指導医、大阪協会副理事長、保団連勤務医委員。