第111回(2025.11.15) ”顔の見える連携”と”断らない救急” 〔熊本協会・日高道弘〕

2026年6月3日

第111回(2025.11.15)

”顔の見える連携”と”断らない救急”

 

 

「顔の見える連携」「24時間365日断らない救急」は、急性期病院によりしばしば掲げられるスローガンである。

これらは、病院が高度医療や入院治療を担い、診療所が初期診療や慢性疾患の管理を担うといった機能分化と役割分担、安心できる医療体制を築くうえで欠かせない理念であり、急性期病院の役割としても極めて重要な要素である。これを実践することで、医療資源の効率的な運用にもつながる。

各種加算が救急受け入れの後押しに

ここ数年「顔の見える連携」として、多くの地域中核病院により「地域連携の会」が盛んに開催されるようになった。

連携する医療施設スタッフを招いて業績や診療科を紹介し、引き続き懇親会を催し、顔と名前を一致させることで紹介や相談を円滑にする。このような動きは、2000年診療報酬改定での病診連携加算の創設が制度的転機となったとされる。

また救急搬送においては、高齢者救急は増加のトレンドであり、必要とされる救急医療も様変わりしつつある。その中で地域の医療機関が「積極的な救急受け入れ」を宣言するなど、協調的な受け入れ体制強化の取り組みも始まっている。救急医療管理加算、急性期充実体制加算など救急対応件数や体制整備状況に応じて評価されるしくみも救急受け入れを後押ししている。

理念と経営、理想と現実の狭間で

一方、診療報酬制度や地域医療構想の影響により、医療機関の経営は日々厳しさを増している。救急医療や医療連携は患者獲得の手段ともなりえるため、医療機関として生き残るために力を入れざるを得ないといった側面も否定できない。理念と経営、理想と現実の狭間で、医療現場は揺れている。

医療連携の本質は、患者にとって最適な医療を提供することにある。うまく誘導されているだけなのか、自らの意思で地域医療を形作っているのか。その問いに向き合う姿勢こそが、これからの医療の質を左右する。そう自問自答しながら、「24時間365日断らない救急」を唱え、連携の会に足しげく参加する日々である。

日高道弘
(ひだか・みちひろ)

国立病院機構熊本医療センター院長。総合内科学会専門医、日本血液学会評議員。熊本協会勤務医部会委員