第1回 コロナ前よりも低い改定率

2022年度医科診療報酬改定を視る

診療報酬改定の概要と特徴を連載でお届けします。

2022年3月18日

2022年診療報酬改定の概要と特徴を連載でお届けします。

 

真水は0.23%程度

2021年末に発表された2022年度診療報酬改定率は、診療報酬の本体相当部分は+0.43%、薬価・材料は▲1.37%となり、ネット(総額)で▲0.94%となりました。
政府の「骨太の方針2021」で掲げる社会保障費の自然増抑制に向けて、事実上5回連続の診療報酬の総額マイナス改定となりました。また、技術料など医療の水準・質に直接関わる本体改定率は、コロナ本格到来直前の2020年度改定率(本体+0.55%)よりも低くなりました。
医療経済実態調査(2021年実施)では、コロナ関連補助金を含めても医療機関の経営水準はコロナ以前の水準や安定的な採算水準に達していません。今回、不妊治療の保険適用や看護現場の処遇改善などを除いた、いわゆる真水として自由に使える本体改定率の財源は+0.23%に過ぎません。コロナ前の医療水準への回復・再建も困難です。

病床削減を続ける

政治決定によって、中医協の審議をショートカットする形で、受診(再診)がなくても、最大3回(初診含め)まで反復利用できる「リフィル処方箋」(処方は任意)が導入されました。コロナ禍で患者・国民の心身状態の悪化が散見されますが、外来受診を間引き医療費抑制(▲0.10%)を図る。患者を外来受診より更に遠ざけるものです。
コロナ禍で病床不足が深刻化しているにもかかわらず、急性期病床を中心に削減・転換を進める。2025年の地域医療構想の達成に向けて、制度改革として7対1入院基本料の要件の厳格化はじめ入院医療提供体制が全般的に縮小されます。
コロナ禍が長期化する中、医科診療所の倒産件数は22件(前年比+10件)と2009年の27件に次ぐ高い水準であす(帝国データバンク「2021年医療機関の倒産動向調査」)。調査対象外となるリタイアも含めればコロナの影響による倒産・閉院は更に深刻といえます。高齢化が進む診療所医師の閉院前倒しにも拍車がかかりかねません。ランニングコストとなる診療報酬の大幅な手当てが必要です。

2022年度診療報酬改定について(2021年12月22日発表)
※抜粋の上、一部修正
本体  +0.43% (※1、※2)
薬価等 ▲1.37% (※3)
ネット ▲0.94%

※1
(ⅰ)看護の処遇改善のための特例的対応 +0.20%
(ⅱ)リフィル処方箋(反復利用できる処方箋)の導入・活用促進 ▲0.10%
(ⅲ)不妊治療の保険適用 +0.20%
(ⅳ)小児の感染防止対策に係る加算措置(医科分)の期限到来 ▲0.10%
なお、歯科・調剤分については、感染防止等の必要な対応に充てるものとする。
※2 本体部分について、上記(ⅰ)~(ⅳ)の計+0.20%を除いた改定率は+0.23%
+0.23%の各科別の改定率は、医科+0.26%、歯科+0.29%、調剤+0.08%
※3 薬価 ▲1.35%、材料 ▲0.02%。
薬価は、実勢価等改定▲1.44%、不妊治療の保険適用のための特例的対応+0.09%
※4 リフィル処方箋 (略)
※5 診療報酬等に関する制度改革
(ⅰ)医療機能の分化・強化、連携の推進に向けた、…7対1入院基本料を含む入院医療の評価
の適正化
(ⅱ)~(ⅶ) (略)

以上

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