月刊保団連2023年2月号

「道」

医学部の入試差別に違法性はないのか
現状に流されず、医師の働き方改革の促進を

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長谷川 麻矢

特集「カルテが狙われる── 医療機関のサイバーセキュリティ対策」

徳島県の半田町立病院がサイバー攻撃を受け、約8万5千人分の電子カルテが閲覧不能となるなど医療機関を狙い撃ちにしたサイバー攻撃が年々増加している。
政府は医療DXの基盤整備として医療機関にオンライン資格確認を義務化するなど、医療分野のICT利活用を強引に進めている。医療情報を守る義務は医療機関に課されているが、病院団体の調査ではセキュリティ対策を担う人材不足や財源不足が指摘されている。
オンライン資格確認の義務化に伴い、新たに電子カルテやオンライン請求システムを導入する診療所も増加するが、サイバーセキュリティ対策等の責任や財政的負担が重くのしかかる。医療機関が備えるべきサイバー攻撃の現状と対策を考える。

サイバーセキュリティの情勢と医療界として対応すべきこと

厚生労働省や内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が繰り返し注意喚起しているにもかかわらず、医療機関ではランサムウェアによる被害が多発している。これ以上の被害拡大を防ぐために、当事者である医療機関は自律的なセキュリティ対策に取り組むことが急務である。同時に国に対しても医療機関へのセキュリティ対策予算の手当を求めたい。

深津 博

身代金要求型コンピューターウイルスに感染して

2021年10月末日、当院はランサムウェアによるサイバー攻撃を受けて電子カルテシステムが停止し、病院機能が麻ま痺ひしました。その詳細を報告します。「ランサムウェアとの戦いは勝つことはできないが、降りることもできない。侵入されることを前提に、バックアップデータをいかに守るかと、感染した際に事業継続をいかに行うか(BCP)の備えをしておくべき」と痛感しました。皆さまの病院が十分な対策を講じ、このような被害に遭わないことを望みます。

須藤 泰史

病院のセキュリティ対策はなぜ遅れているのか

全国的に医療機関に対するサイバー攻撃が続いている。コロナ禍に対する医療を危機にさらす重大なインフラ攻撃である。政府はようやくデジタルトランスフォーメーションとサイバーセキュリティの同時推進という方針を立てたが、厚生労働省の対応は遅れている。病院のセキュリティ対策への公的補助金の支給など、政府が責任を果たすことが急務である。

吉中 丈志

電子カルテ未導入の無床診療所が直面する新たな脅威

2021年10月の徳島県つるぎ町立半田病院、2022年10月の大阪急性期・総合医療センターとランサムウェア感染による診療制限が大きく報道された。地域医療への影響、患者のプライバシー等を考えれば大問題だが、無床診療所の院長として考えると、対岸の火事のように思えてしまうのも事実だ。しかし、2022年11月、静岡県の診療所でもランサムウェア感染による被害が発生したとのニュースを知り、診療所でも攻撃を受けるのだという事実に衝撃を受けた。この機会に診療所レベルでのサイバーセキュリティについて考えてみたい。

田辺 由紀夫

サイバー攻撃から歯科医院を守るために

レセプトのオンライン請求が原則義務化されてからは、レセプトコンピューターを導入した歯科医院は多い。その多くは電子媒体の請求で、インターネットにつながずに利用しているが、オンライン資格確認の義務化によりネット環境につながざるを得なくなった。ランサムウェアの被害が多数報道される中、歯科医師にはどんな対応が求められるか、考えてみた。

杉藤 庄平

医療情報の結合とプライバシーの危機

医療情報は、プライバシー保護のため分散管理が原則である。医療情報の結合には、それを許容する個別の法律と、結合の必要性と相当性(プライバシー侵害の程度を超えないこと)を満たすという法律の合憲性が必要である。EUでも、患者の自己決定権を離れた、匿名化されない医療情報の結合・利活用が促進されているわけではない。日本でも、利活用を重視し過ぎることで患者との信頼関係を破壊しないよう、患者・現場からのボトムアップで、デジタル化を設計し直す必要がある。

武藤 糾明

サイバーセキュリティ対策緊急アンケート結果

保団連病院・有床診対策部、情報通信部

診療研究

糖尿病とその合併症に関する最近の話題 第1回 糖尿病食事療法の考え方

今回の連載では、糖尿病とその合併症をテーマとして4回シリーズで最近の糖尿病に関する話題を紹介する。1回目は、食事療法の話題を取り上げたい。食事療法は様々な情報が社会にあふれており、診療上も迷う場面が少なくない。そのため、食事療法に関するガイドラインの作成に関わった経験や、最近の研究結果も交えながら、一人の糖尿病専門医が食事療法についてどのような考えを持っているのかを述べることにする。糖尿病の治療において、食事療法は重要な柱である。患者の年齢、合併症、併存疾患を考慮しながら個別化を図って方針を決定する必要がある。

川浪 大治

子供を病気にしない「食養」のススメ〜歯科医からの提案〜

本稿では、40年に至る診療における実践と経験から得た「食養」について報告する。食養とは食事で体を健康にすることである。科学的な証明は特になされていないが、日々の治療から、病気という症状が体全体に関与していることに気付いた。私は体の健康と病気に関わる口腔について、消化器としての機能と、食べ物の2本立てで考察し、日々の診断と治療を行っており、その中で特に小児が一番重要な時期であると実感している。同時に医科歯科の連携に当たっても歯科は重要な役割を果たし、病気にしないための守りの要となり得ると考える。

鳥山 栄

文化

薬の発明よもやま話 第3回「殺鼠剤」から生まれた医薬

「毒薬」を応用する目的は、排除したい人間の殺害ばかりではない。狩猟のための毒矢や害獣・害虫の駆除などにも広く用いられている。今回は、太古からの人類の不快な共生者であるネズミの駆除に用いられた「殺鼠剤」とそこから派生した医薬について紹介しよう。

笠原 浩

経営

【経営・税務誌上相談】亡父の家を売却した場合、税法上の取扱いはどうなるか

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益子 良一

【雇用問題】固定残業制度をやめ通常の残業制度に戻したい

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曽我 浩

【患者トラブル相談室】ネットへのネガティブな書き込み(10)通常対応でも解決できなかったケース

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尾内康彦