マイナカードICチップに搭載 公的個人認証サービスの危ない話

ICチップによる商取引

 

マイナカードのICチップに搭載された電子証明書を利用した公的個人認証サービスは公的手続きだけでなく、民間サービスにも利用されています。デジタル庁は公的個人認証サービスを利用した民間事業者は174社(2023年3月10日時点)を紹介しています。

銀行・証券口座開設やローン契約等、様々な場面で利用されています。

 

民間事業者におけるマイナンバーカードを用いた公的個人認証サービス(JPKI)導入・利用のご紹介(デジタル庁)

 

マイナンバーカードを用いた公的個人認証サービス(JPKI)導入事業者及び事例一覧

マイナンバー法等改正案で年金受給者の公金受取口座の登録、マイナンバーの利用拡大が盛り込まれました。マイナカードに搭載された電子証明書(公的個人認証)を使い、様々な民間事業者のサービスで利活用できます。マイナカードの公的個人認証サービスは、銀行・証券口座開設やローン契約などの民間サービスにも利用できます。

 

管理できない方は危険  マイナカード所持でもリスク

 

現状として、高齢者施設の多くで受診のために利用者の健康保険証を預かっていますが、暗証番号の管理を含め紛失責任が重いため、高齢者施設の約94%が「マイナンバーカードを管理できない」(保団連4月調査)のが現状です。

「実印と印鑑証明、銀行印の機能も備えたマイナカードを、自己で管理できない人に無理やり持たせればどうなるか。犯罪の温床になることは明らか(5月17日参考人意見陳述)」と指摘しました。

施設入居者・利用者だけではありません。要介護高齢者や認知機能が低下した方は、マイナカードを自己で管理することが困難な状況にあります。健康保険証を廃止し、無理やりマイナカードを所持させた場合どうなるのか?

第三者が本人になりすまして銀行や証券口座の開設、保険契約などを本人の意思に反して行われる危険性があります。公的には本人が当該契約を交わしたことになるので、犯罪・なりすましが発覚しにくいのが厄介なところです。

 

完全犯罪の恐れ 営業との境目がわからない?

 

オレオレ詐欺やアポ電強盗など高齢者を巡る犯罪多発で、警察から注意喚起がされてきました。

しかし、マイナカードを利用した犯罪は、完全犯罪が成立するのではと危惧します。また、PHR(パーソナルヘルスレコード)事業者に医療情報・健康情報が提供されると間違いなく、健康食品など関係産業の販売攻勢にさらされます。

健康に不安がある方からすると、当該健康食品を契約する合理性・妥当性があるので、勝手に契約させられて商品が届いても、契約解除や解除の意思表示をしにくい。かつ、発覚しにくい、営業行為との境目が曖昧になることも危惧します。

デジタル庁が進める民間金融サービス等での公的個人認証の利用は、暗唱番号とマイナカードとスマホがあれば、各事業者のウェブサイト上にて署名用電子証明書を利用して口座開設などの決済ができます。

しかも本人が契約したことになる署名用電子証明書は、コンビニで初期化できるようになりました。https://www.jpki.go.jp/jpkiidreset/howto/kiosk.html

 

実印と印鑑証明に加え銀行印の機能も兼ね備えたマルチカードは管理できる人には便利な側面もありますが、同時に、金融商品を取り扱う企業側にとっても収益機会の創出となります。しかし、高齢者を巡る犯罪が多発する中で、リスクや危険な側面があることは見逃してはなりません。

デジタル庁は、利便性のみ強調し、不正利用は停止できるとのみ述べ、デメリットを十分に説明していません。他人の実印を使用された場合、「不正利用」を証明することすら困難となります。犯罪にあったことすら気づかない恐れがあるのが非常に厄介なところです。

マイナカード所持でも犯罪などに巻き込まれるリスクを承知した上で、リスクをとってまでも利便が勝るという方が本人の申請により所持するのが基本です。正しい利便性と同時にもリスクなどの必要な情報すら提供されない中、判断がつかない中で、健康保険証を廃止で脅されてマイナカードを申請・所持している方は、今一度、リスクと利便をよく考えて利用いただくことが必要かと思います。

 

電子証明書の失効申請は簡単にできる

 

こうした犯罪に巻き込まれないための一つの方法として、総務省所管のJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)が電子証明書の利用を失効手続を案内しています。

保団連の特設ページにて案内していますのでご参照ください。

マイナ保険証(電子証明書)失効手続きが可能です

役所に行かなくても、専用アプリを入れれば失効手続きができるので簡単で便利です。アプリやPC操作が苦手な方は、ご家族に手伝ってもらえると利用者用、署名用電子証明書を失効することができます。

顔写真付きの身分証明書としてマイナカードは必要だと言う方もいらっしゃると思います。

マイナカードに搭載された電子証明書を失効させても、顔写真付きの身分証としてマイナカード自体は使えます。有効期限は発行から10年間となります。

 

「マイナ保険証を持っていない」が、資格確認書の発行条件

6月2日に参議院で可決成立したマイナ関連法案では、健康保険証を廃止するとともに、マイナ保険証によるオンラインでの資格確認が困難な場合、被保険者の申請に基づき保険者が「資格確認書」を発行すると法規定されました。

資格確認書の発行対象などは今後省令などで制定されることになります。国会審議では、マイナカードを持たない人、マイナカードを持っているがマイナ保険証化していない方は、資格確認書の発行が想定されるとの答弁がありました。

一方、マイナ保険証の手続きを行った方が資格確認書を申請できるかについては曖昧なままとなりました。

マイナ保険証とは先にご紹介したように、マイナカードの電子証明書をキーにして被保険者情報にアクセスする仕組みです。従って、マイナカードの電子証明書を失効させるもしくは、マイナカードそのものを返納することにより確実に資格確認書を申請・取得することができることとなります。