誤登録の大半はシステムエラーが原因
厚労省は9月29日に開催された医療保険部会で、5695件の誤登録が確認されたとする調査結果を公表しました。保団連は、誤登録が生じた市町村の国民健康保険や後期高齢者医療保険制度など保険者数やエリアなどが公表されておらず、あくまで医療機関等からの誤登録報告により保険者で確認された事例に過ぎない氷山の一角であることを指摘してきました。
公表された資料では、4017件が正しい事務処理手順を踏まえず誤登録、システム仕様による問題が1678件とされています。しかし、誤登録がなぜ生じたのかが最大の謎であり今後の対策を考える上でも重要となります。厚労省が負担割合等の誤登録が生じるパターンを8つに分類していることがわかりました。ヒューマンエラーというよりシステム仕様によるエラーが大半です。件数や地域などに加えて原因分類などの詳細を情報公開することこそが誤登録問題を解決する上で不可欠です。負担割合の誤登録問題を徹底検証しました。実際には誤登録の原因が8パターンに分類されていることがわかりました。ヒューマンエラーが7割と報道されていますが、ほとんどがヒューマンエラーではなくシステム仕様によるものです。未公開情報を元に徹底分析しました。
誤登録の分類(公開されているもの)
①正しい事務処理手順が踏まれておらず、システムで防止する仕組みがなかった事象 4,017件該当
・新保険証の事前送付後、現行の保険証を再発行した場合に、マニュアルに即した取扱を行わなかったため、負担割合等の相違が発生
・誤った負担割合等を入力した後に訂正した際、誤った負担割合等の情報を無効化しなかったため、システム上、当初入力した誤った負担割合等を表示
・負担割合等の変更等により新たな保険証を発行した際、誤った発効期日を設定したことにより、システム上、誤った負担割合等を表示等
②事務処理手順に関わらず、システムの仕様の問題により発生する事象1,678件該当
・月末に加入届の情報を入力し、所得が分かった翌月の月初に所得情報を入力したケースで、システム上、誤った負担割合等を表示等
誤登録8パターン(公開されていないもの)
【パターン①】健康保険証の発行後に、発行した健康保険証の前の現行の健康保険証を再発行した場合に、負担割合等の相違が発生する事象
年次更新や年度途中の負担割合の変更により作成された高齢受給者証の発行後に、年次更新等前の現行の高齢受給者証を再発行した場合、最後に出力処理をされた高齢受給者証が最新の高齢受給者証として中間サーバー情報連携される仕様になっており、再度、高齢受給者証の出力処理をする必要があるが、その作業を失念した場合、再発行により申間サーバーに情報連携された高齢受給者証偽)の情邦が、年次更新等の後も最新の高齢受給者証情報として中間サーバーに上で扱われ、高齢受給者証の負担割合とオンライン資格確認システム上の負担割合に相違が発生する。また、過去に遡って負担割合を変更する等により過去の高齢受給者証を発行し 直した場合でも、高齢受給者証の負担割合とオン資システム上の負担割合 に相違が発生する可能性がある。
【パターン②】発行期日の誤入力により、負担割合等の発生する事象
加入者情報を作成する際に、発効期日の誤入力等があると中問サーバー取込時にエラーになるため、保険者システム側での事前チェック機能により、当該加入者情報の送信が保留となった結果、当該加入者情報が中問サーパーに情報連携されず、オンライン資格確認システム上には古い加入者情報が表示されることになり、高齢受給者証の負担割合とオンライン資格確認システム上の負担割合に相違が発生する。発効期日の誤入力の仕方によっては、保険者システム側での事前チェック機能では保留とはならず、誤った負担割合で情殺連携がされることにより、高齢受給者証の負担割合とオンライン資格確認システム上の負担割合に相違が発生する可能性がある。
【パターン③】年度途中の健康保険証発行の際に有効期限を入れないことで、負担割合等の相違が発生する事例
加入者情報の限度額適用認定証適用区分(適用区分)の中間サーパーへの情報連携に際して、有効な限度額適用認定証情報が存在する場合に、その情報を情報連携する仕様になってており、年度途中に限度額適用噐定証が発行される区分(例えぱ、低Ⅱ)から発行されない区分(例えば一般Ⅰ)へ異動した場合に、限度額適用認定証情報に適切な有効期限 (有効終了年月日)を入れないと、オンライン資格確認システム上には異動前の適用区分が表示される ことにより、実際の適用区分とオン資システム上の適用区分に相違が発生する。
【パターン④】同時に複数の健康保険証を入力し、本来不要である健康保険証を無効化しなかった場合に、負担割合等の相違が発生する事象
保険者システムに、当初2割(3割)と誤って入力した情報にっいて、無効化せずに、再度正しい3割(2割)の情報を入力したために、オンライン資格確認システムに2割と3割の両情報が連携された結果、両情級のうち誤っている2割(3割)の情報が長新情報として判定さ れ、オンライン資格確認システム上で表示されることにより、実際の負担割合とオンライン資格確認システム上の負担割合に相違が発生する。
【パターン⑤】国保情報集約システムの仕様により、過去の健康保険証履歴の有効終了目と新たな健康保険証の有効開始日に空白期間がない場合に新たな健康保険証の情報を過去の健康保険証履歴に統合して連携されることで、負担割合等の相違が発生する事象
【パターン⑥】中問サーバーに加入者情報をアップロードするタイミングが任意になっていたため健康保険証の更新との闇に大きなタイムラグが生じ、負担割合等の相違が発生する事象
【パターン⑦】保険者システムの不具合により、保険者システムに入力した資格情報について、本来、オンライン資格確認システムに連携されるべきだが、負担割合等の情報が連携されないことで、負担割合等の相違が発生する事象。
事象①
連携するデータ量の削減等のため、月次処理に脚いて負担割合等に更新がない情報については作成しない仕様としているが、この処理が年次処理にも適用されていたため、年次の一斉更新の際に情報に全く更新がない場合に連携する情報が作成されず、オンライン資格確認システムの高齢受給者証もしくは限度額適用認定証が有効期限切れとなり、負担割合等が衷示されなくなる。
事象②
年度途中で負担割合等が変更となった場合に、変更後の資格情報が連携されない事象。
【パターン⑧】月末日の区分の日次判定の後、翌日(月初)に月次判定・日次判定をした結果、月次判定結果が最新情級として判定されることで 発生する事象
保険者システムの不具合により、以下の手順を踏んだ場合に、実際の限度額区分等とオンライン資格確認システム上の限度額区分等に相違が発生する事象。
1.月の末日に当該保険者において赤尋が不明な者が加入届を行い、日次で限度額区分等 の判定を行う(①)。
2.翌日(翌月の初月)に未申告として隈度額区分等の判定結果データを作成した(②)のちに、所得不明考の所得情報を入力し、限度額区分等が修正された(③)結果、(③)の限度額区分等と前月の限度額区分等(①)が一致した。
3.本来であれば、当日の最終判定結果である(③)がオンライン資格確認システムに連携されるべき ところ、日単位で判定・オンライン資格確認用データ連携を行う仕様となっているた め、システム上(②)が最新情報上判定され、(②)の結果のみが連携されてしまう。