負担割合5695件の誤登録は氷山の一角-全被保険者調査と情報公開で実効性ある対策を

保団連調査の記者会見、要請を受けて厚労省も調査に乗り出す

マイナ保険証、オンライン資格確認を巡るトラブルは留まるところを知りません。千葉市内のクリニックに通う患者さんの事例では、健康保険証の券面に表示された窓口負担割合(3割)が正しいのに、マイナ保険証(オンライン資格確認)では2割と表示されました。本トラブルについて千葉市長が7月13日記者会見で「担当職員のシステム登録のミスによるもの」、「再発防止に努める」と謝罪しましたが、その後5事例の誤登録が追加で明らかとなりました。千葉県保険医協会が7月20日に調査を公表、神奈川県保険医協会では8月4日調査を公表しいずれも保険証の券面とオンライン資格確認システム上のデータ表示が異なる事例を10数%の医療機関で経験したことを明らかにしました。

保団連は、こうした事態を受けて7月26日に厚労省要請するとともに、全国規模の調査を開始し、8月9日8月23日9月13日と記者会見で調査結果を公表しました。こうした中、厚労省も負担割合の誤表示について調査を乗り出しました。マイナ保険証と健康保険証の負担割合が異なるトラブルについて、8月24日の医療保険部会で調査を行う方針を示していました。

参考:新マイナトラブル 693 医療機関で負担割合が違う! 32 都道府県 290市区町村で確認 (8月6日)

【9月13日記者会見】マイナトラブル最終報告 7070医療機関から回答 – 全国保険医団体連合会 (doc-net.or.jp)

【9月13日要請】マイナトラブル 厚労省3部局と懇談 

厚労省の全保険者に対する負担割合の調査内容とは

厚労省は全保険者向けの調査を実施したと説明しています。70歳以上の被保険者を多く抱える市町村国保等向けの調査依頼は以下の通りです。厚労省からは8月22日に各市町村国保等に調査依頼があり締め切りは8月31日と短期間の調査となりました。

質問内容①

令和5年4月1日(土)~令和5年8月18日(金)までの間に、医療機関や被保険者からの情報提供等により、被保険者証とオンライン資格確認等システムの証情報の表示について、負担割合等(高額療養費の限度額適用区分を含む。)が相違している事象が発覚し、オンライン資格確認等システム(以下「オン資システム」という。)に連携している負担割合等の証情報を修正したことがありますか。どちらかをご回答ください。*

□ ない

□ ある

質問内容②

負担割合等が相違した原因について、原因毎に発覚した件数をご教示ください。なお、例示している事象は、これまでに負担割合等が相違する可能性のある事象として確認されているものです。

①証の発行後に、発行した証の前の現行の証を再発行した場合に、負担割合等の相違が発生。

②発行期日の誤入力により、負担割合等の相違が発生。

③年度途中の証発行の際に有効期限を入れないことで、負担割合等の相違が発生。

④同時に複数の証を入力し、本来不要である証を無効化しなかった場合に、負担割合等の相違が発生。

⑤月末日の区分の日次判定の後、翌日(月初)に月次判定・日次判定をした結果、月次判定結果が最新情報として判定されることで、負担割合等の相違が発生。

⑥その他

⑦原因が不明

 

5695件の誤登録が判明

厚労省は9月29日に開催された医療保険部会で、調査結果を公表しました。その結果、保険者の事務処理ミスやシステム仕様などの問題により負担割合等の相違が判明した事例が5695件に上ることが分かりました。

 

 

保団連調査と何が違うか? 地域・件数・理由の開示はトラブル解消に不可欠

 

保団連調査(9月13日、回答数7070件)では39都道府県、374市区町村、978医療機関で負担割合の誤表示が確認されています。調査結果では、誤表示の原因はさまざまですが、誤表示の内容、件数、市町村等を明らかにしました。保団連は調査結果を記者会見するとともに、9月13日に厚労省と懇談するなど本トラブル解決に向けて全力で取り組んできました。

厚労省調査では、誤登録が判明した5695件の被保険者が所属する保険者(地域)や誤登録の内容(本来2割が3割に誤登録等)などトラブル解消に必要な情報は開示されていません。厚労省担当官の説明によるとこえれらの情報は把握しているとのことです。全体件数だけの報告では不十分です。これらの情報を開示した上で具体的に対処していかないと負担割合の解消は困難な課題です。医療機関、患者・国民、保険者、国が協力して対処していく上でも速やかな情報開示を求めていきます。

参考:マイナトラブル調査データ「負担割合誤表示」 

マイナトラブル調査データ「報道されていなトラブル事例」

 

調査の対象範囲が狭い

厚労省担当官の説明によると、5695件はあくまで、「各保険者で負担割合等の相違が判明した件数」であること、調査対象は、あくまで「全保険者」であり、「全被保険者」を対象にした調査ではないことが分かりました。国が前面に立ちトラブル解決に向けて動き出したと言えますが、「全被保険者」を対象にした調査でない以上、5695件の誤登録は氷山の一角と言わざるを得ません。厚労省として再発防止に向けた措置が提案されました。各保険者や医療機関、患者・国民の協力を得ながらトラブルを解消していくというのであれば、徹底した情報公開を行うべきです。そして、最大のトラブル防止策として健康保険証を残すこと、患者・国民に健康保険証の持参を広く呼び掛けることをあらためて求めます。

レセコン仕様による負担割合誤表示も公開を

厚労省は、オンライン資格確認等システムのデータと異なる負担割合がレセコンで表示されるトラブルについて7月31日からレセコン業者向けに調査を行いました。締め切りは9月4日です。調査内容や回答項目は以下をご覧ください。

調査内容

回答項目

【ご依頼9月4日(⽉)まで】厚⽣労働省からのお知らせ
(レセプトコンピューターの仕様によって、正しい負担割合が表⽰されない事案についての調査回答依頼)
〈9⽉1日追記>
ご回答いただきました皆様、ご協⼒まことにありがとうございました。現時点で未回答の方には、9⽉4日(月)までアンケート期間を延⻑させていただきますので、回答のご協⼒を頂けますと幸いです。日頃よりオンライン資格確認導⼊のご協⼒ありがとうございます。7⽉31日(月)に、厚⽣労働省が第8回システム事業者導入促進協議会(オンライン)を開催いたしました。協議会の中でもご依頼したとおり、レセプトコンピューターの仕様によって、正しい負担割合等が表⽰されない事象(詳細は下記を参照)が発⽣していることを踏まえ、貴社で稼働しているレセプトコンピューター製品の動作仕様についての調査にご協⼒をお願いいたします。

★レセプトコンピューター製品を複数お持ちの場合は、レセプトコンピューターの製品単位で回答をお願いいたします。
★回答の締切りは、9月4日(月)とさせていただきます。
★問1-1、問2-1で「2」または「3」に該当するシステム事業者は、早急(9月4日(月)まで)に「オンライン資格確認の情報とは異なる前期又は後期高齢者の負担割合が表示される場合がある/表示される仕様となっており、オンライン資格確認端末または保険証の情報を別途確認、入力する必要があること」について、製品を使用する全ての保険医療機関・薬局に対して周知いたただき、その状況を問1-5、問2-6でご回答ください。
★本回答結果は、厚生労働省及びオンライン資格確認等システムの関係者内で使用します。回答の内容によっては、ご連絡の上、詳細をヒアリングさせていただくことがございます。
★本調査結果全体の概要(個別の企業名・製品名等は除く)については、社会保障審議会医療保険部会等での公表を予定しています。
【レセプトコンピューターの仕様によって、正しい負担割合等が表⽰されない事象について】
前期又は後期⾼齢者の負担割合について、オンライン資格確認等システムの資格確認結果として返却される保険者が設定した本来の負担割合(保険者が設定した負担割合が設定される資格確認結果ファイルの項目名は下記「※」を参照)を使用せず、レセプトコンピューター上で独自算定/設定した負担割合を表⽰し、本来の負担割合が医療機関等において確認できない事象が確認されております。また、限度額適用認定証の適用区分の表⽰についても同様の事象が確認されております。

※保険者が設定した負担割合が設定される資格確認結果ファイルの項目名
・前期高齢者 高齢受給者証⼀部負担金割合
・後期高齢者 被保険者証⼀部負担金割合
・自己負担限度額 限度額適用認定証適用区分

これらの調査結果とレセコン業者へのヒアリングを踏まえて9月29日の医療保険部会で調査概要を報告しました。

その結果、回答102社(112製品)のうち、半数近い47社(48製品)でレセプトコンピューターの仕様により異なる負担割合が表示される場合があることが分かりました。高額療養費の限度額認定証の適用区分の表示について、レセプトコンピューターの仕様により異なる適用区分が表示される場合は28社に上ることも分かりました。

回答数の約半数で負担割合の誤表示や限度額認定区分の適用区分の誤表示の可能性がある仕様であったことは、重大です。保険請求に重大な影響を与えかねない事態です。各医療機関で迅速かつ実効性ある対応が行えるよう、当該レセコン業者が取引している医療機関の数や地域など可能な限り情報開示するとともに全医療機関に周知を徹底すべきです。さらに、厚労省は、医療機関等向けポータルサイトにオンライン資格確認の結果を正しく表示しているシステム事業者・製品名を公開するだけではなく、レセコン仕様による異なる負担割合が表示される場合があるレセコン業者や製品名についても厚労省ホームページ等で公開すべきです。

 

Q&A

Q:実害はあるのか?

A:あります。 間違った負担割合で保険請求した場合、返戻となります。医療機関の事務負担と資金繰りに影響します。また患者に間違った負担割合で一部負担金を徴収した場合は過不足を事後的に追加徴収もしくは返金することが必要となり、患者との無用なトラブルに発展します。

参考: 保団連トラブル調査でも少なくとも20都府県43市区町村で返戻が発生

Q:誤った負担割合は解消されたからよいのではないか?

A:「負担割合の誤表示5695件」は、マイナ保険証等のオンライン資格確認システムを利用して得られる負担割合(データ)と患者さんが持参された健康保険証の券面との違いがあることが判明した件数です。

一連のマイナトラブルを受けて、医療機関スタッフは、データと保険証の齟齬が頻発し保険者への確認に追われています。こうした作業の中で、誤登録であることが確定したものが厚労省調査で報告されているものであり、①保険証のみ利用して保険診療(保険請求)を行ったため、データの誤登録に気づかないケース②オンライン資格確認のデータと保険証の負担割合が違うがいちいち報告しないなど既発生だが保険者等へ未報告のケース③その他-を含めると潜在的に数多くの誤登録が存在することが推察されます。

Q:「負担割合の誤表示」トラブルについて厚労省はいつ知ったか? 国が調査した経緯・きっかけは?

A:7月26日の厚労省保険局国保課への要請時には、厚労省担当官は千葉市の負担割合誤登録の事例を報道で把握したと述べていました。千葉市内の医療機関がきっかけとなり、千葉協会調査、保団連調査などの報道が続く中で国も調査に乗り出したのが経緯です。

Q:保団連が負担割合の誤表示を把握した時期は?

A:第一弾のマイナトラブル調査(5月から6月)で事例として報告されていましたが、第二弾トラブル調査(7月から8月)で設問を設けてのトラブル調査を実施し、負担割合の誤表示が確認された医療機関の地域や件数、詳細内容等が明確になりました。

 

 

 

関連報道

【しんぶん赤旗】9月30日

マイナ負担誤登録5695件/厚労省公表 総点検なく全容不明/本紙告発が契機 (jcp.or.jp)【FNN】9月30日

マイナ保険証で医療機関受診 窓口負担の誤表示5695件|FNNプライムオンライン

【東京新聞】9月30日

マイナ保険証、利用率が下がり続けて5%割れ…「不安が払拭されていない証左」:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

【ANN】9月29日

マイナ保険証の受診で誤表示が5695件 7割は事務処理のミス 厚生労働省 (tv-asahi.co.jp)

【NHK】9月29日

“医療費負担割合の誤表示 全国で5700件近く確認” 厚生労働省 | NHK | 厚生労働省

【朝日新聞】9月29日

「マイナ保険証」の利用率は5%弱 4カ月連続減少 厚労省は危機感:朝日新聞デジタル (asahi.com)

【東京新聞】9月29日

<速報>マイナ保険証の全国利用率 8月末は5%下回る 4カ月連続で下落:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

【日経新聞】9月29日

マイナ保険証、自己負担割合の誤表示5695件 – 日本経済新聞 (nikkei.com)

【毎日新聞】9月29日

マイナ保険証、窓口負担の誤表示5695件 原因は事務処理ミス | 毎日新聞 (mainichi.jp)

【共同通信】9月29日

窓口負担で誤表示5695件 マイナ受診、厚労省集計|47NEWS(よんななニュース)

【朝日新聞】9月29日

マイナ保険証 窓口負担の誤表示は5695件 厚労省調査:朝日新聞デジタル (asahi.com)

【時事通信】9月29日

窓口負担の誤表示5695件 マイナ保険証での受診時―厚労省:時事ドットコム (jiji.com)

【TBS】9月29日

「マイナ保険証」窓口負担割合の誤表示5695件 厚労省が公表 原因は事務処理ミスが7割 | TBS NEWS DIG (1ページ)