子どもを持つがん患者さんに高額療養費アンケート 記者会見で中間報告

キャンサーペアレンツの水戸部さん(右)。中学生の次男(左)も同席した。

高額療養費制度の負担限度額引き上げについて子育て中の利用者への影響を調べるため、保団連は、子どもを持つがん患者を対象にアンケート調査を行っています。2月6日、調査結果の中間報告をまとめ、記者会見を開きました。がんで闘病中の水戸部ゆうこさんも中学生の次男とともに駆けつけ、引き上げ反対を訴えました。水戸部さんが1人で立ち上げたウェブ署名も紹介し、多くのメディアが報道しました。

 

子育て・現役世代ど真ん中の患者さんへの影響は?

 

負担限度額引き上げ案は、「子ども・子育て支援」「現役世代の保険料軽減」のためのとして大臣合意されました。しかし、物価高騰の折、子どもの教育・養育費なども高額になる中で、子育て中の患者とその家族への影響は大きいと考えられます。

そこで保団連は、子どもを持つがん患者でつくる「キャンサーペアレンツ」有志の方々とともに、家計・子育てへの影響調査を実施。2月5日時点で284件の回答が寄せられました。

「治療中断」5割、「回数減」6割

アンケートからは、多くの人が病気で収入が減る上に、治療と子育てにお金がかかり、厳しい状況が浮き彫りになりました。

7割が多数回該当を経験している一方、現在は初期治療を終えて定期的に検査を受けている「経過観察中」の人も4割います。副作用による休薬などで多数回に該当しない場合もあり、長期療養していても必ず多数回該当になるわけではありません。自由記述欄では、既に厳しい家計の状況について書いている人も多くいました。

引き上げになった場合、5割が「治療を中断」、6割が「治療の回数を減らす」ことを考えざるを得ないと答えています。

「治療のせいで進路変更なんてあり得ない。なら死にます」

子どもの生活や教育への影響は、「進路変更」が5割、「習い事を減らす」も6割に上りました。

自由記述欄では、「私の治療のせいで進路変更するなんてあり得ません。なら死にます」「こんなにお金がかかってまで私が生きるのは子どもたちに申し訳ないです」「人殺しの制度改悪だと思います」など悲痛な声が寄せられています。

「母さんのことが心配」

子育て中のがん当事者で呼びかけ人の一人として参加した水戸部さんは「限度額引き上げは、病気を抱えながら子育てをする親たちにとって、過酷です。『生きるのを諦めろ』と言われているようで、絶望しています」と話し、制度改悪の反対を訴えました。

家庭の中では、なるべく子どもたちにしわよせがいかないよう、塾代なども何とかやりくりして捻出しているといいます。会見に同行した次男は記者からの質問に答えて「正直、僕自身は今のところそんなに困っていません。でも、母さんのことが心配です」と話しました。

水戸部さんがたった1人で始めたウェブ署名「高額療養費制度自己負担上限額の引き上げ反対!」は1日で3万人以上が賛同し、現在は5万5千人に上っています。