【調査の目的】
政府は、2024年秋に現行の健康保険証を廃止し、マイナカードに一体化する法案を今国会に提出。マイナカードによる保険資格確認を基本とする方針を示している。しかし、健康保険証の廃止は、要介護高齢者などマイナカード取得・利用・管理が困難な方に重大な影響をもたらす。
厚労省は、マイナカード利用が困難な方への対応として▽マイナカードの申請・代理交付等の支援について施設職員や支援団体等に協力要請する▽施設長が施設入所者分のマイナカードを管理し、さらに、医療機関・薬局の受診等の際にマイナカードを介助者など第三者に預ける場合等の対応を検討するとしている。このままではマイナカード管理が困難な方の医療アクセスが制限されるだけでなく、利用者・入所者の健康保険証を管理してきた介護・高齢者福祉関係者にとって多大な負担となる。利用者・家族との無用な混乱・トラブルを招きかねない。健康保険証廃止、マイナカードが基本とする方針で介護現場、高齢者施設にどのような影響が生じうるのかを明らかにするために本調査を実施した。
調査期間:2023年3月24月-2023年4月10日
調査対象:42都道府県の高齢者施設、介護施設等
送付方法/送付件数:8980件 FAX(5278件)、郵送(3702件)
回答方法:グーグルフォーム、FAX
回答件数:1219施設(有効回答)
回答率: 13.6%
【調査結果の特徴】
▽約84%の施設で利用者・入所者の健康保険証を管理している。
▽約93%の施設が利用者・入所者のマイナカードの申請代理に対応できない。
▽94%の施設が利用者・入所者のマイナカードを管理できない。
▽健康保険証が廃止されると利用者・入所者の医療へのアクセスが困難を抱える。
▽利用者・入所者のマイナカード管理に伴い介護・高齢者福祉関係者に多大な負担となる。
▽マイナカード管理に伴い利用者・家族と施設側との無用な混乱・トラブルを招きかねない
【各調査項目の概要】
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回答が寄せられた施設類は特別養護老人ホーム(67.7%)、老人保健施設(22.4%)、グループホーム(4.5%)、養護老人ホーム(2.0%)、ケアハウス(1.1%)、障害者支援施設(2.4%)となった。
健康保険証廃止法案について賛成が7.8%、反対が59.2%、どちらでもないが33.0%となった。
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介護保険被保険者証の廃止について賛成が6.9%、反対が62.7%、どちらもでもないが30.4%となった。
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利用者・入所者の健康保険証を施設で管理しているが、83.6%、管理していないが16.4%となった。
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利用者・入所者のマイナカード申請(代理)について対応できるが6.5%、対応できないが93.5%となった。
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「対応できない」と答えた理由(複数回答)として、「本人の意思確認ができない」83.0%が、 「手間・労力がかかり対応できない」が79.8%、「本来業務ではない」が65.4%、「行政職員が対応すべき」が38.2%となった。
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利用者・入所者のマイナカードが「管理できない」が94%、「管理できる」はわずか6%
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「管理できない」と答えた理由は(複数回答)について、「カード・暗証番号の紛失時の責任が重い」が91.1%、「カード・暗証番号の管理が困難」が83.8%、「不正利用、情報漏洩への懸念」が73.5%、「家族の同意が得られない」が41.0%となった。
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健康保険証廃止による施設への影響・危惧(複数回答)について、「マイナカードの取得・利用が困難な利用者への対応増加(代理申請等)」が90.0%、「マイナカード紛失・更新切れ・破損、再発行などへの対応が困難となる」が81.8%、「保険証と一体化したマイナカード(暗証番号含む)の管理が困難となる」が80.7%、「マイナカード紛失・盗難など家族等とのトラブルの増加」が76.2%、「施設内でのカードの紛失・再発行の手間や労力の増加」が75.4%、「情報漏洩やセキュリティ対策が不安」が71.1%、「医療機関に受診の際の付き添いサービスを提供できなくなる」が28.8%となった。
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健康保険証廃止による利用者・家族への影響(複数回答)について、「マイナカードの取得・利用が困難な本人・家族の負担が増加する」が88.5%、「マイナカード紛失・更新切れ・破損などへの対応が困難」が83.8%、「本人が手続きに必要なIT機器が使えない・理解できない」が79.7%、「マイナカード紛失・盗難など施設等とのトラブルの増加」が75.4%、「情報漏洩やセキュリティ対策が不安」が70.8%、「マイナカード取得に必要な顔写真の撮影・取得が困難」が56.0%、「医療機関に受診の際の付き添いサービスが受けられなくなる」が27.5%となった。
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以上