電子証明書の有効期限切れでマイナ保険証が使えない!

医療現場のトラブルで多いのが顔認証付きカードリーダーを巡るトラブルです。「うまく顔認証ができない」「タイムオーバーで何度やってもエラーになる」、「カードリーダー機器の不具合」やマイナカードそのものが使えない・不具合も報告されています。中でもマイナ保険証の利用登録を済ませたが、マイナカードに搭載された利用者用電子証明書の有効期限が切れており、医療機関の顔認証付きカードリーダーで読み取れないトラブルに注目しています。

 

 

有効なマイナ保険証保有者」は厚労省・総務省は把握していない

マイナ保険証利用登録したが、マイナカード搭載の利用者用電子証明書が5年の有効期限切れで使えないトラブルを巡り、マイナ保険証の利用登録は済ませたが利用者用電子証明書の有効期限が切れて現在、マイナ保険証として使用できない方の数を把握しているかについて、参議員の伊藤岳事務所を通じて総務省自治行政局住民制度課に照会し、10月19日に回答を得ました。また、参議院議員の芳賀道也事務所の仲介で10月26日に厚労省関係局へ要請した際に厚労省医療介護連携政策課に質問し、その場で回答を得ました。質問と回答(動画) その結果、厚労省も総務省もつかんでいないことがわかりました。

 

<厚生労働省保険局医療介護連携政策課の回答>  ※芳賀道也参議院議員事務所の仲介で10月26日に実施

【10.26厚労省要請(動画配信中!)】マイナ総点検を徹底追及! 「不安払拭」は保険証残してこそ – 全国保険医団体連合会 (doc-net.or.jp)

質問3. 資格確認書、資格情報のお知らせ
Q3:マイナ保険証を紐づけした後に、マイナカードもしくは電子証明書の有効期限切れとなり、更新手続きができなかった方はマイナ保険証の利用が不可能となる。こうした方の数を把握しているのか?

A3:現時点で把握していない

Q3:これらの方へのプッシュ型資格確認書の交付はどのように行う予定か?
A3:対応を現在検討中。

 

<総務省自治行政局住民制度課 マイナンバー制度支援室の回答> ※伊藤岳参議院議員事務所より照会し10月19日に回答

Q:マイナンバーカードに健康保険証の紐づけを実施した被保険者で、マイナンバーカード返納や電子証明書が失効した者の数をご教示ください。特定できないのであればその理由をしめされたい。

A:J-LISにおいて個別の保険証紐付け状況を把握できないため、ご質問の件数についても把握しておりません。

J-LISも支払基金も「有効なマイナ保険証保有者」を掴んでいない

社会保険診療報酬支払基金(厚労省所管法人)はオンライン資格確認システムを管理・運営しており、マイナ保険証利用登録をした方の情報はつかんでいるものの、利用者証電子証明書の失効情報は掴んでいないことになりました。他方でマイナンバーカードを発行・管理しており、マイナカードに搭載する公的個人認証(電子証明書)の認証局であるJ-LIS(地方公共団体情報システム機構、総務省の所管法人)でも、マイナ保険証の紐づけ情報は把握していないことが明らかになりました。

 

「マイナ保険証保有者」でも無保険者扱いに

保団連は、早くからこの問題を指摘し、「マイナ保険証の保有者」であってもオンライン資格確認が使えないために「無保険者扱い」となる方を大量に生み出すと懸念を示してきました。

資格確認書を誰に発行していいかわからない? なんて!! 前編 

資格確認書を誰に発行していいかわからない? なんて!! 後編 

岸田首相は8月4日記者会見でマイナ保険証を保有していない方には申請がなくてプッシュ型で資格確認書を送ると述べました。また、各保険者はリアルタイムでマイナ保険証の利用登録を済ませた方のデータを保有しておらずどのように対応するか厚労省は「検討中」を繰り返し具体的な方策は未定のままです。さらに、現状では、マイナカード搭載の利用者用電子証明書とオンライン資格確認システムを一旦紐づけたら解除できない仕組みとなっていますが、システム改修の後解除できるようにすると言いました。誰が解除したかの把握も課題となります。

今回、マイナ保険証の利用登録を済ませた方(紐づけた方)でも利用者用電子証明書の有効期限が切れて、医療機関で使えない状態にある方がかなりいることがわかりましたが、それが誰なのかについて、総務省、厚労省、支払基金、J-LISのいずれも掴んでいないことが明らかとなりました。

つまり、「有効なマイナ保険証を持っている方が誰か?」すら不明なため、「マイナ保険証保有者」でも無保険者扱いになる方がいるということです。

6月2日に改正成立した健康保険法ではマイナ保険証(電子資格確認)が使えない時、被保険者は、保険者に申請することで資格確認書が交付されると規定されています。しかし、「マイナ保険証保有者」でも電子証明書の更新ができず使えない人が発生しうることから、使えない状態にある方から保険者に申請があれば資格確認書を交付する義務が発生します。しかし、現状では保険者において申請に該当する方か否か把握・確認することができないため、法令上の資格確認書を申請交付の対応も困難となります。

利用者用電子証明書 22年度は52万人が失効

利用者用電子証明書の失効者数は、J-LISの令和4年度事業報告書(令和5年6月)によると「利用者用電子証明書152万枚を更新手続きした」と記載されています。一方で電子証明書の有効期限が到来した住民に対して204万通の有効期限通知書を送付したとあります。つまり、204万-152万=52万通は電子証明書を更新していないことになります。

2022年度だけでも52万人が電子証明書が失効しています。マイナ保険証の利用登録を済ませた方で利用者用電子証明書が失効している方は、医療機関を受診した際に、マイナ保険証を顔認証付きカードリーダーにかざしても「期限切れ」の表示が出て、オンラインで資格確認ができません。つまり有資格者でもオンラインで資格確認できない「無保険者扱い」となります。受診時に被保険者の資格確認ができないため窓口負担10割を一旦支払わないといけなくなる可能性が出てきます。

関係資料

J-LIS事業報告書(p34-35)

(1)署名用電子証明書及び利用者証明用電子証明書に係る認証局の運用
令和4年度は、全国の市区町村で約279万枚(署名用電子証明書127万枚、利用者証明用電子証明書152万枚)の電子証明書の更新手続を完了した。

(3)電子証明書の円滑な更新
マイナンバーカードに搭載されている電子証明書の有効期限が到来する住民に対して、更新時期をお知らせする「有効期限通知書」を作成・発行し、令和4年度は、約204万通の有効期限通知書を発送した。