暗証番号なしの「顔認証マイナカード」で窓口混乱!?

「顔認証マイナンバーカード」ってなんだ?

前総務大臣がマイナカードの不安解消として「暗証番号なしマイナカード」を11月から運用開始すると述べていましたが、どんな仕組みでどこで手続きできるのか? もう忘れている方も多いと思います。現時点での進捗状況などを探りました。現在、総務省で準備が進められており、各市町村窓口等で運用開始は11月27日から予定されているようです。鈴木総務大臣が11月10日の記者会見で準備中であることを明かしました。

【参考】総務大臣記者会見(11月10日)

手間暇かけて 保険証利用のみ

暗証番号なしカードの仕組みの説明によると、本人および代理人による申請も可能とされていますが、しかも当初は「要配慮者」など限定されていましたが、希望する者を対象とされました。

利用者用電子証明書にかかる4桁の暗証番号を人為的にロックして、マイナポータル閲覧やコンビニでの住民票発行サービスを使えなくする仕組みです。医療機関でのマイナ保険証利用や目視での本人確認機能は活用できるとしていますが、何ができて何ができないか説明と理解に時間を要します。暗証番号をロックするのに必要なツールが総務省から提供される予定ですが、現時点で市町村等には提供されていません。事務マニュアルなどは詳細や説明会も不十分な状況で開始となります。

利用登録せずロックするとマイナ保険証が使えない

マイナカードを保有しているが、マイナ保険証の利用登録を行っていない方が約2000万人います。その方が利用登録をしていない段階で市町村窓口で暗証番号をロックしてしまうと、医療機関窓口等でのマイナ保険証の利用登録ができなくなります。医療機関でマイナ保険証の初回利用登録をする際には、暗証番号か顔認証での対応しかできないことがオンライン資格確認マニュアルでも記載されています。つまり、ロックを掛けた後に、マイナ保険証が使えると思い込み、医療機関を受診した場合、マイナ保険証によるオンライン資格確認が使えない(無効)となります。顔認証付きカードリーダーの不具合も続出しており、顔認証機能を利用してマイナ保険証の利用登録が必ずしもできない事態が生じることは容易に想像できます。

市町村も住民も運用で混乱

暗証番号を使えなくするために、自治体職員が任意で4桁の暗証番号を打ち込み、その後にロックすることで利用者側が暗証番号を使えなくする仕組みです。希望する方が申請・交付され、かつ、即日発行で切り替えも自由にできるため、申請を受ける側の職員の事務量も多くなります。そのため、各種確認や手続きでマイナカード取得時と同様に、市町村窓口の混乱が予想されます。

デジタル知識が不足し、サポートが必要な市民への説明・周知が不足する中、始めることに利用者や市町村職員からも不安・不満の声も出されています。

総務省は、市町村窓口に対して、暗証番号をロックする前にマイナ保険証の利用登録を済ませてと案内することを求めていますが、実際には、口頭での案内をしただけで問題が解決しません。マイナ保険証の利用登録をしているかしていないかは、職員がマイナカードを目視しただけではわかりません。本人がマイナポータルを開いて利用登録を確認する方法しかありませんが、市町村職員から利用者に確認を求められても、自身でマイナポータルを閲覧できない方も多いため、その段階での混乱は必至です。 代理人申請による対応も複雑

暗証番号にロックを掛けたマイナカードを保有されている住民が他の自治体に転出した際に、受け入れ自治体が転入手続きを行うことになりますが、受け入れ市町村では当該住民のマイナカード読み取る際に必要な暗証番号が使えないため、マイナカードの更新手続きが困難となります。その課題への対処も複雑な手間を要するようですので混乱は必至です。

 

顔認証マイナンバーカードの概要と申請手続き

伊藤岳議員事務所等を通じて保団連が総務省自治体行政局から入手した資料に記載されている制度の骨格や留意事項、事務取扱いは以下の通りです。

概要

暗証番号の設定や管理に不安がある方の負担軽減のため、暗証番号の設定を不要とし、カードに搭載された利用者証明用電子証明書を用いる際の本人確認方法を機器による顔認証又は目視による顔確認に限定した

「顔認証マイナンバーカード」を導入

※実印相当の効力を持つ署名用電子証明書は、暗証番号(6~16桁)の入力を顔認証又は目視で代替できないため搭載しない。

希望する者を対象とし、本人又は代理人が市町村窓口で手続(※)を行う。

※カードの申請・交付のための来庁時に併せて実施。カードを取得済みの方については随時実施。

・ 通常カードから顔認証カード、顔認証カードから通常カードいずれの設定の切り替裏面可能(即日対応)

・ 医療機関等において外見上区別できるよう、カードの追記欄に「顔認証」と記載 裏面   ⇒記載欄が満欄の場合 カードケースに記載

・ 11月27日から受付開始(予定)

顔認証マイナンバーカードで利用できる/できないサービス

○利用できるサービス

・ 健康保険証としての利用。顔認証又は目視により確実な本人確認を行った上で、オンライン資格確認のほか、本人の同意により特定健診等の情報や診療/薬剤情報の閲覧が可能(※)。
※公的個人認証法上、利用者証明用電子証明書の利用時に顔認証又は目視により本人確認を行うためには主務大臣の認可が必要。現在、この認可を受けている者はオンライン資格確認を実施している社会保険診療報酬支払基金のみ。
・ 券面の顔写真や記載事項(4情報等)を用いた本人確認書類としての利用。

×利用できないサービス

・マイナポータル、各種証明書のコンビニ交付、その他のオンライン手続など、暗証番号の入力が必要なサービ
スは利用できない。

申請方法

顔認証マイナンバーカード取得の流れ①

①カードの申請・更新時(交付時来庁方式)

②カードの申請・更新時(出張申請・申請時来庁方式

顔認証マイナンバーカード取得の流れ②

③電子証明書更新時

④取得済みカードからの設定切り替え時

市町村の統合端末での設定について

設定の流れ

(1) 署名用電子証明書が搭載されている場合は破棄又は失効させる
(2) カード交付時の暗証番号設定画面において、カード内共通暗証番号(4桁の暗証番号)を職員が無作為の番号で設定
(3) カード運用状況が「運用中」に更新されていることを確認後、統合端末に新たにインストールする暗証番号ロック用ツール(11月下旬にJ-LISから配布予定)を用いて、4桁の暗証番号すべてにロックをかける
(4) カードの追記欄に顔認証と追記
(5) カードを住民に交付

解除の流れ

(1) 住民が顔認証マイナンバーカードから通常のカードへの設定の切り替えを希望する場合は、暗証番号初期化申請書の提出を求める。署名用電子証明書の搭載も希望する場合には、署名用電子証明書の発行申請書も
併せて提出を求める。
(2) 暗証番号初期化・再設定の手続を実施
(3) カードの追記欄に記載されている「顔認証」に取り消し線を引く
(4) カードを住民に交付