【2024年介護報酬改定】訪問介護切り捨て 倒産・休廃業が過去最多に

患者の自宅で訪問歯科診療を行う森元副会長

倒産・休廃業が過去最多

介護報酬改定で、4月から訪問介護の基本報酬が2%以上引き下げられた。訪問介護事業所は規模が小さいほど利益率が低く、昨年は倒産・休廃業が過去最多の427社に上った。さらに基本報酬引き下げで事業撤退が増えれば、在宅生活が維持できなくなる恐れがあり、不安が広がっています。

在宅維持が困難に

東京都内で歯科医院を開業する保団連の森元主税副会長は、外来の傍ら、半径4kmほどを自転車で回り、訪問歯科診療を続けています。「ほとんどが独居で、訪問介護がなければとても暮らしていけないのではないか。都内でもヘルパーの不足や高齢化で入浴介助が難しい事業所も出てきている」と話します。
この日、訪問した95歳の患者は、70代の娘が主に介護していました。以前は訪問介護で週2回の入浴介助を頼んでいましたが、ヘルパーの高齢化などで継続が難しくなり、何人も交代してきたといいます。あるヘルパーは1日7~8軒回るため、いつも余裕がなさそうに慌ただしく帰っていったそうです。現在は本人のリウマチが回復し、たまたまデイサービスの空きがあったので週2回通って入浴していますが、こうしたサービスを提供する事業所がなくなれば、「とても自宅での介護は続けられない」と話していました。

黒字は大手のみ

訪問介護などの基本報酬を巡る審議で、厚労省は「訪問介護の収益率は7・8%の黒字だ」と引き下げの理由を示しました。しかし、実際には一部の大規模事業所が平均利益を押し上げているだけで、36・7%が赤字になっています。また、規模が小さいほど利益率が低く、1カ月の訪問回数が400件以下の事業所では平均利益率が1・2~1・4%と、ほとんど利益がない状況です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などで集中的にこなせる事業所と異なり、中山間地で高齢者の自宅を一軒一軒回るような事業所では、ガソリン代の高騰も大きく響きます。しかも移動時間には報酬がつかないため、回れば回るほどマイナスがかさみます。
昨年の訪問介護事業者の倒産・休廃業は、過去最多の427社に上ることが東京商工リサーチの調べで分かりました。介護事業者全体では632社が倒産・休廃業し、このうち訪問介護事業者は倒産の5割以上、休廃業の7割以上を占めます。

物価上がって報酬下がる

2022年の厚労省「賃金構造基本統計調査」によれば介護職員の賞与込み給与は全産業平均を月額6万8千円下回る一方、消費者物価指数は20年を100として24年2月時点で106・9に上昇しています。
2000年の介護保険制度発足以降、居住費・食費の自己負担化を含めた影響率は合計でマイナス1・53%。介護報酬を引き上げてこなかったことが、介護職員不足・介護崩壊を招いてきた根本原因と言えます。
職員の処遇改善、物価高騰への対応、感染対策や利用者へのサービス向上のためには、10%以上の大幅な介護報酬引き上げが不可欠です。