トラブル抱えたまま、「子ども」「難病」助成など運用拡張—マイナ保険証
デジタル庁は3月26日、マイナンバーカードについて、自治体が行う「子ども医療費助成」の受給者証などとして利用できるようにする取組を一部の自治体・医療機関・薬局において開始したと報道発表しました。愛知県一宮市、熊本県熊本市など5自治体36医療機関等で順次開始されています。(下図を参照。)
(1)子ども助成、難病・障害者医療にマイナ運用拡張
現在、マイナンバーカードの健康保険証利用(オンライン資格確認)は、サラリーマンや公務員、国民健康保険など一般的な公的医療保険制度において実施されています。今回、新たに地方自治体が独自に行っている子ども・ひとり親家庭などへの医療費助成、いわゆる「地方単独事業」や、国が実施している障害者への医療費助成(自立支援医療)、難病患者(患児)への医療費助成など「公費負担医療」においても、マイナ保険証利用を可能とします(※これまで同様、紙の医療受給者証での受診も可能)。順次、参加する自治体(都道府県含め)や医療機関を拡大して、2026年度より全国的に運用を開始する方針です。
しかし、医療現場でトラブルも続く中、やみくもな運用拡張は様々な問題をはらんでいます。
(2)マイナトラブル再来懸念
そもそも、公費医療や地方単独事業を利用する患者・家族が先行実施する医療機関をマイナンバーカードで受診するかどうかは任意です。マイナポイント目的でマイナンバーカードを取得す人が大半を占める中、マイナンバーカードの利用率(オンラインで資格確認したうち)は病院で11.5%、診療所で5.1%にすぎません。健康保険証の目視による資格確認も含めれば、利用率はさらに低いのが実状です。オンライン資格確認の本格稼働(2021年10月より)の際と同様、先行実施する医療機関でほとんど利用されないまま、状況把握が曖昧・不明瞭なままに、2026年度の本格実施ありきで見切り発車され、後から誤登録・誤開示、エラー・トラブルが噴出する事態が強く危惧されます。