第5回 「公費医療」情報の取り扱いに疑問 マイナ保険証運用拡張
(1)医療方針、家族情報の漏洩にも
公費負担医療は、障害、難病、感染症や公害病はじめ、とりわけ患者が内密に留めておきたい医療情報に直接関連してきます。決して許されることではありませんが、不用意に第三者に漏えいした場合、社会的な不利・差別の発生にもつながりかねません。
また、PMHに登録する医療情報は、各種「受給者証の券面記載事項」の全てとされており、通院指定先の医療機関名や「医療の具体的方針」(更生医療、育成医療など)、さらに家族内での他の難病患者の有無(小児含め)などの情報も含まれています。誤った登録・開示となれば、患者の通院先や医療方針に加え、世帯の内部事情まで漏えいする事態になります。
(2)本人同意なくPMH登録は問題
他方、PMHへのデータ登録において「本人の同意」は求められていません。現在の医療費助成に際して、自治体が既存の各業務システムにおいて、受給者情報を取得・管理することは当然必要です。しかし、公費負担医療に係る患者情報の特質、「紙の受給者証」が使用できる(オンライン資格確認を使用しなくてもよい)ことからも、本人の同意・意向も何ら確認しないまま、自治体がPMHに受給者情報を勝手に登録することは疑問と言わざるを得ません。
現に、難病の医療費助成においては、治療・研究目的として国が管理する患者情報データベースに対して、患者は自身の疾患・医療情報のデータ(臨床調査個人票・医療意見書【診断書】)の提出を断ってもよいことが法令上で認められています。少なくとも、自治体からMPHへのデータ登録について、「本人の同意」の有無を確認すべきです。