提言書は、高齢者が様々に優遇されており、現役世代と不公平であり、負担増を正当化しています。しかし、高齢者の生活実態とは全く異なる。
物価高騰で実質賃金も下がり続けて余裕のない生活を強いられています。厳しい生活を強いられていることは現役世代も同じです。
しかし、高齢者は公的年金にマクロ経済スライドを導入されて物価高騰下でも実質年金が目減りしています。国民年金月5万円ではとうてい暮らしていけない、高齢でも働かざるを得なくなっている人も増加しており、健康管理がより重要となっています。
世界と比較する 日本は高齢者優遇か?
日本の高齢化率は29.1%と高いにも関わらず、社会支出(OECD基準による社会保障給付費)の対GDP比はアメリカ、フランス、スウェーデン、イギリス、ドイツ、日本の6か国で比較すると最も低いことがわかります。各国の国民1人あたりの社会支出で見ると、上記6か国の中で最下位です。高齢者に関連する社会支出のうち、『高齢(介護や年金など)』『遺族(年金)』では3番目ですが、『保健(医療)』は最下位です。
識者も高齢者一人あたりの医療費はこの間減らされ続けていると指摘しています。
参考:日本の社会保障は本当に高齢者優遇か? 佐久大学特任教授 唐鎌直義
生活保障にならない低い年金
老齢基礎年金の満額受給額は月額6.5万円。老齢厚生年金の平均受給額が月額14.6万円(老齢基礎年金含む)で所得補償としては不十分です。物価高騰で実質年金が目減りするマクロ経済スライドにより年金収入が減らされ、高齢者の生活実態は現役世代に増して極めて厳しい状況にあります。
世界的に見ると日本は「高齢者は優遇」とは言えませんが、「高齢者以外があまりに冷遇されている」ため相対的に高齢者関連の社会保障が優遇されているように見えます。「貧すれば鈍する」です。全ての世代において医療・社会保障給付を手厚くすることが求められている。
高齢者の医療費が医療費全体を圧迫しているかのように言われていますが、事実とは異なります。医療費の伸び(2017~22年度。コロナ影響が大きい21年度は除く)は平均2.82%のうち、高齢化による影響は平均1.06%に対して、医療の高度化など技術進歩に負う「残余」が平均2.7%とはるかに大きい割合を占めます。