高齢者の窓口負担3倍化で命・健康が蝕まれる⑤ 高額療養費の上限引き上げは 早期発見・早期治療に逆行

高額療養費の上限引き上げで医療費が払えなくなる

日本維新の会は、現行の高額療養費制度を現役世代の基準に合わせて上限を引き上げることを提案しています。

維新提言では▽年収156万~370万円の一般所得者の区分の基準を引き上げる▽「必要不可欠な医療範囲に限定」「繰り返し同じ医療サービスを利用する場合」は上限額を見直す―2点です。

高齢者の多くが利用している高額療養費制度の適用条件が厳しくなる制度改正となり、「高齢者医療の斬り捨て」とも言えます。

 

年取ると治療費もかさむ

高額療養費制度は月額の窓口負担金が一定額を超過した部分は医療機関で支払わなくてよい制度みです。高齢者は所得が年金収入のみの方が多く医療費支出が現役世代に比べて多いため上限額を低く設定されています。

加齢に伴い心身が老化し、病気になりやすくなります。75歳以上の方の86%は、外来通院しており、64%が2種類以上の慢性疾患を治療。5割弱が毎月外来通院しています。

一方で、定年後の主な収入は年金収入がのみとなります。加齢に伴い収入は低下します。総収入に占める医療費支出の割合がどうしても高くなり、家計収支が赤字で貯蓄を取り崩さざるを得なくなっています。

年齢に比例し、所得が上昇する現役世代(国税庁調査)と比べて年金が主な収入の高齢者は収入が低い上に一定額しか入りません。

 

入院時の食事代は高額療養費使えない

一方、医療費支出は加齢に伴い増加するため、所得に占める医療費支出の割合が現役世代に比べて高くなります。複数疾病を受診・治療し入院など高額の医療費支出が高く払えなくなるため月額の上限額以上は支払が不要となります。

維新・提言では、高額療養費制度で「漫然とした治療の継続」と攻撃し、高齢者医療にも「必要不可欠」な医療範囲に限定と主張しています。しかし、実態として年金が収入のほとんどを占める中低所得者(年収156万円~370万円)に必要性が乏しい医療のため負担上限額まで支払うような経済的余裕などありません。

入院患者のうち特に高齢入院患者(65歳以上)には、通常の窓口負担割合(1~3割)以外にも、入院時の食事代・療養病床における部屋代、差額ベッド代(選定療養)など様々な自己負担があります。これらは高額療養費の対象ともなりません。

 

受診を我慢し、手遅れとなる場合も

がん・白血病、心疾患、脳血管障害など命に関わる疾患でも、進行の見通し、重症度の程度などに応じて、結局、線引きせざるを得なくなります。

高齢者の多くが罹患している生活習慣病などを医療給付から外せば、初期予防、進行抑制・重症化予防に支障が生じ、結果的に医療費も増えることになります。

医師が医療上必要と判断、リハビリや検査(CT・MRI、PET)などを制限すれば病気の発見が遅れ、病気が進行した状態、手遅れとなる場合もあります。体に不調を感じたら自己判断せず、早めの受診と治療を行うこと必要に応じて検査を実施することが何よりも重要です。窓口負担金が払えず受診を抑制することはあってはなりません。