高齢者の窓口負担3倍化で命・健康が蝕まれる④ 高齢者の窓口負担3割化は暴論

維新・提言は、現役世代の社会保険料負担は限界に達するとして、▽高齢者における医療費窓口負担は一律3割化▽現役世代の後期高齢者医療保険料の廃止▽生活保護受給者への窓口負担導入―などをあげている。加えて、後期高齢者について、▽「後期高齢者向けの新たな診療報酬体系」を再構築し、「医療費の適正化」を図ると強調しています。

 

高齢者一律3割で現役世代の6倍~18倍

75歳以上の高齢者の収入は大半が年金収入のみです。現役時に比べて所得が大幅に下がります。

加齢に伴い、複数の慢性疾患を抱え、受診回数は多くならざるを得ません。原則1割負担の時でも、年収に対して窓口負担額が占める割合は現役世代(30~50代)の2~6倍です。

窓口負担だけを原則3割負担とし現役世代と平等だと主張していますが実態は異なります。後期高齢者を一律窓口負担3割とすると年収に対する窓口負担額が占める割合は現役世代の6倍~18倍に膨らみます。

 

2割化で既に受診抑制が発生 深刻化は目に見えてる

75歳以上への窓口2割負担が2022年10月から導入されました。これにより約370万人(75歳以上の20%相当)が窓口負担2割となり1人当たり平均で年2.6万円の負担増となります。3年後には経過措置が切れて年3.4万円の負担増です。

厚労省の2割負担導入の影響結果検証でも、当初予想した▲2.6%を超えて、平均で▲2.0%~▲4.1%の受診抑制(受診日数換算)が発生しています。保団連調査でも受診の手控え、投薬・検査・処置の手控えも起きています。

 

現役世代の保険料軽減は 年350円

2割化で現役世代の保険料負担軽減は(1人平均、事業主負担除く)は、わずか年350円~400円にすぎません。

誰しも現役を卒業しますので、高齢期になると、今の高齢者より負担が増えることとなります。現役世代は生涯を通じて負担が増える改悪です。

結果として負担が軽くなったのは、政府・財務省です。一連の改悪で医療保険財源の公費部分の負担が軽くなりました。「現役世代の負担軽減」は政府の負担を軽くするためのこじつけでしかありません。高齢者医療費の窓口負担3割化でこうした構図がさらに拡大することになります。

 

「8050問題」に拍車 現役世代に跳ね返ってくる!?

高齢者の負担増は、高齢親族の生計を支える者、働きながら親の介護を担う者(約267万人)や、育児と介護を同時に担うダブルケア世帯(少なくとも25万人以上)など、現役世代にも跳ね返ってきます。ワーキングプア、メンタルヘルス、DVなどが原因で成人した子どもを高齢世代が支える「8050問題」も増えています。 老々家族が共倒れになるケースも現実化しそうです。

現役世代の支援金なくなるは非現実的

維新・提言では、後期高齢者医療保険制度の財源構成のうち、現役世代の支援金制度を廃止できるかのように謳っていますが、財源規模からも約4兆円不足するなど辻褄が合っていません。その4兆円を穴埋めするため、受診抑制や高齢者向けの診療報酬削減などで捻出することを提案していますが非現実的です。高齢者の窓口負担3割化などで、現役世代の支援金がなくなるかのような言い方は政策的な現実性・合理性に欠け「プロパガンダ」に近いものです。