【救急搬送時のマイナ活用を検証する③】実証実験で救急現場の負担は軽減したのか?

総務省消防庁は、マイナンバーカードを活用した救急業務の実証実験を全国35都道府県・67消防本部・660救急隊に広げて5月から実施することを発表しました。25年度中に本格運用を目指すとしています。

救急搬送時のマイナカード利用で傷病者情報の聴取時間が短縮し、円滑な救急活動が可能になると説明しています。

消防庁が考えた救急隊がマイナカード活用による「期待される主な効果」は以下の2点です。

  • 傷病者の観察結果・症状(現病歴)とマイナンバーカードを活用して得られた情報(受診歴・ 診療情報・薬剤情報・特定健診情報等)から総合的に判断し、傷病者に適応する搬送先医療機関の選定等に効果が期待できる。
  • 傷病者の観察等を実施する者と、マイナンバーカードで情報収集を行う者で役割分担 することで、情報の聴取時間が短縮し、円滑な救急活動につながる。

令和4年の救急搬送時のマイナ活用・実証実験では、通常の救急搬送の傷病者の観察等に加え、マイナカードの活用という新たな業務が加わることで現場の負担感は増えました。アンケートに回答した救命救急士の9割が実証実験で使用した機器の操作性やプロセスの簡略化を求めています。機器類は医療機関で使用されている顔認証付きカードリーダーを準用したため救急現場で使いやすいものとは言えないとの不満が出ています。顔認証の認識機能向上(回答176人中38人)など医療現場でのトラブルと同様に改善を求めています。

政府は、2025年度中に救急搬送時のマイナカード活用を本格稼働することを目指していますが、検討会まとめでは、うまく使えれば負担軽減などにつながるとしていますが一方でさらなる改善が必要との課題も残しています。救急現場での実装には十分かつ慎重な検証が必要です。マイナ活用ありきで見切り発車すると大きな禍根を残すことになります。